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2020年FIN/SUMを見て:「情報の工場」でのヒトと機械のつながり

僕は毎年FIN/SUMが楽しみである。今年のブロックチェーンのスピンオフになったFIN/SUMだがとても考えされられる事が多かった。ちょっと個人的な雑記にはなってしまうが、問題定義そしてその解決法の方向性を少し書いてみたのでお付き合いいただければ。え?FIN/SUMって何かって?

FIN/SUMとは

日経と金融庁主催の1年に1度ある日本最大のフィンテックのカンファレンスである。金融の業界の効率化などを考えているイノベーター達が一か所に集まるイベントで毎年参加しているとても大好きなイベントである。そして一昨年、去年と自分が勤めているSymphonyもステージに上がっており、去年はMUFG、SMBC日興、みずほ銀行とともに僕がステージに立たせていただいている。

(「Symphonyによる金融業務効率化最前線 ~メガバンク、証券会社の先行例」)

そのFIN/SUMだが、今年のメインセッションは来年3月まで延期され2020年はスピンオフの「FIN/SUM Blockchain & Business」のみとなった。

主にブロックチェーンに関わる問題であったりソリューションを語るセッションが多いので今回はSymphonyはステージなどでは参加はせず、完全視聴者としての参加になった。だが結果的にはとても興味深いセッションがたくさんあり、結局2日間画面に張り付いていた。

SBI R3 Japanのご活躍と三井住友FGの動き

毎年FIN/SUMのブロックチェーンのセッションなどではご活躍のR3の山田さんだが今回のイベントでは例年に加えて更にご活躍だった。

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ここにはやはりこのエリアでのSBIグループのやる気(昨年日本のオペレーションを合弁会社にしたことも含めて - SBIが米R3と合弁会社SBI R3 Japanを設立へ ブロックチェーンプラットフォーム「コルダ」導入支援)またCordaの広がり方によりだと思う。そういう意味では最近出た三井住友FGの動き(14%出資)というものとても興味深い。

貿易金融について

通貨であったりカストディであったりセキュリティトークン(STO)であったりと色々なテーマが飛び交うFIN/SUMだったが、僕が興味を持ったのは貿易金融である。このエリアに関しては上の三井住友FGのリリースの中でも出資の目的のエリアでもあると書いてある。今回のFIN/SUMでも

エンタープライズ・ブロックチェーンの可能性
ブロックチェーン技術を活用した貿易金融
世界のユースケースに見るブロックチェーンの可能性

などのセッションで取り上げられていた。

貿易金融のデジタル化の意味に関しては「ブロックチェーン技術を活用した貿易金融」のセッションで三井住友銀行の長谷川様がとてもきれいに説明をしている。

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貿易金融のプロセスは上の複雑な図の参加者の中で

・「当事者間を紙、紙、紙」
・「コピーはだめ。原本が取引の過程に合わせてその都度クーリエで取引」
・「その都度手作業で内容を精査し、契約書と各書類の中身が一致していることを確認して初めて荷物が渡される」
・「恐ろしく非効率」

などデジタル化の意味がとてもありそうなエリアである。さらに世界の貿易取り扱い金額が総額2,000兆円の中で70%は金融機関のファイナンス提供が行われていないというものすごいビジネスの可能性があるエリアである。

このエリアでのR3 Cordaもしくはその上に動くアプリたちでの進めてきたデジタル化というのは素晴らしいものがあった。その中でもやはり「導入のスピード」に関する懸念、エンタープライズに対する導入であるからこその痛みというのはいくつかのセッションで語られていた。この点に関しては僕も先週に書いた「B2Bフィンテックの砂漠での3年間 - #2 砂漠にて」がエンタープライズ導入やB2Bフィンテックの難しさなどについて書いてあるので興味があったら読んでほしい。

「情報の工場」の効率化

さて、とても個人的な観点になるがこの三井住友銀行やR3やCordaの上で動くアプリたちが、とても素晴らしい仕事をして進めているのは「情報の工場」の効率化である。現在の知識労働者たちの仕事は「工場」の仕事などとはかけ離れてると思うかもしれないが実はみんな「情報の工場」で仕事をしている。情報の

・素材を加工し
・部品にし
・組み立てたり、分解し
・できた製品や部品を倉庫に格納し
・可能な製品や部品を出荷する

などなど。ほら、工場でしょ😎。特に金融のビジネスなどは物理的にモノが動かず、常に「情報の工場」の作業で製品がビジネスやヒトの間を行き来していることが多い。上記の貿易金融の世界では効率よく向上に情報が入ってくる様に、そしてプロセス出来る様にと情報・プロセスのデジタル化が急スピードで進められている。

「情報の工場」の在庫増えたのに非効率に?

さて情報がデジタル化されることは常に良いことに思えるが、そこで考えさせられるディスカッションがツイッターで起こっていたのでこちら。社内のコミュニケーションが対面などからチャットに移り情報が増えたのに「情報過多」「組織内で中な情報シェアは後退」。

「情報の工場」の材料は増えたのに、しかも「重要な情報」含めて。なのに後退。何故だろう?

ここには「情報の工場」でのヒトと機械の情報の作りかたの違いそしてインターフェースの問題が存在する。

・機械は主に人間の指示に従い構造化された情報を作ることが得意、「価格が動きました。price=$125, time = 2020/08/30 10:00 」など。それに対し
・ヒトは会話やチャットなどで非構造化された情報を作ることが得意。「今日四谷でランチを食べた。あ、その際にちょっと思いついたんだけど、xyz商事の部長さん。ん-ーーーーっと、あそうそう田中部長。彼に今朝社内で流れてた価格変更の件話してないよね。これって彼らにはプラスに働くかもしれない。」

しかし、その情報はどちらも構造化された状態で工場では格納され、整理していなければ効率良く使うことができない。ここに野村修平さんが(ツイッターでは@VC_II_1009)上げている問題が存在する。

「情報の工場」でのヒトと機械の協業のインターフェース

「情報の工場」ということで機械が主役なのかと思われるかもしれないが、そこではヒトと機械が両方活躍しないといけない。特に金融などの高度な専門性が必要とされ重要、間違いが許されない情報を扱うのであればそこでヒトの活躍というのは更に大事になる。そのヒトと機械が活躍が必要な世界では「構造化された情報と非構造化された情報の行き来」がとても大事になる。情報が自由に構造化、非構造化の形を変えヒトと機械の間を効率的に行き来をしないといけない。例えば

機械は
・構造化された情報を作り、工場で格納する
・必要な時に格納された情報を引き出し、加工する
ヒトは
・非構造化された情報を作り(構造化された情報もつくるが)
・それが構造化された形で格納される
・必要な時に格納された情報を引き出し、加工する

そこで機械とヒトが自由に簡単に一緒に仕事をできないといけない。

① 機械がヒトに構造化された情報から必要な情報を通知してあげる
② その情報をもとにヒトがヒトとチャットなどを使い非構造的なコミュニケーションで情報をプロセスをする
③ その結果がまた構造化されて必要なヒト・機械に情報の通知、もしくはまた工場に格納されないといけない

この協業の形の効率化こそがSymphonyが進めている金融の世界でも可能なチャットでヒトが非構造的なコミュニケーションをしながら普段扱っているアプリケーションなどへの連携である。この連携が特許をもった暗号化の技術や金融でも必要なコンプライアンスの機能を活用して可能にしている。活用例としては

・セールスフォースなどの顧客情報や取引情報を持ったプラットフォームやアプリとの連携で、必要な顧客情報や取引情報を機械が通知したり、機械がヒトのために調べごとをして、その情報をもとにヒトとヒトが会話、交渉、調整などをし、その会話の情報をまた構造化して格納する等のプロセスをサポートしている。
・金融での相対取引などの複雑な交渉のプロセスをヒトとヒト、そして価格を出す機械、在庫を理解した機械、取引のブッキングをできる機械などをすべてをつなぎ「多数のヒトと多数の機械が参加する」エンドツーエンドのプロセスの効率化を進めている。

その「情報の工場」での働き方の一部はこちらのオンラインセミナーでも一部紹介している - 「オンラインセミナー:Symphonyが牽引する金融業界のニューノーマル」。

当然自分たちが作っているものも全く完全ではなく道半ばである。ただSaaSプラットフォームの進化というのは、想像よりも早い。このインターフェースをどれだけ自然にどれだけ恐ろしく簡単にするかが勝負である。「自然に簡単に」というのはヒトにとっても機械にとってもそうならなければいけない。

そんなことを考えさらに貿易金融のエリアでも「情報工場」の機械とヒトのインターフェースとしてもっと自分がやっている仕事も役に立てるのではと実感した。

「情報の工場」での将来のインターフェース

情報の工場でヒトとヒトや機械をつなぐインターフェースというのは現在ではチャットのインターフェースなどが効率が良いといわれているが、これがひと昔は電話やパンチカードやメールだった。将来どんなものになるかはまだわからない。個人的には人間の心から体が動く、情報を作るという作業には時間を要するのでそれを解決するインターフェースというのにはとても興味がある。テスラが発表した「脳に電極」なんてソリューションも進んでくれれば良いなー、と思っている。

Thank you FIN/SUM!!

こんなことを考え、表現する機会をくれたFIN/SUMを主催してくれた皆様、そしてこんな大変な時期にステージに上がって業界の発展のために時間をかけてくれた数々のイノベーターの皆様にもとても感謝したい。他にも思ったことが色々あるので、また色々表現できればと思う。

FIN/SUMの全セッションビデオはこちらの日経XSUM YouTubeチャンネルから視聴可能。すべてのセッションがこのようにオンラインですぐ見れるというのはさすが日経様。

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