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FIN/SUM:日本のすべてに金融の興奮を(金融・フィンテックの祭典②)
Japan Fintech Weekについての投稿第二弾はFIN/SUMについて。僕は普段から公言している長年のFIN/SUMファンである。金融パーソンとフィンテックパーソンが1週間同じ空気を吸うことができる機会というのはとても大事だと信じており、登壇していたこともあるしこのnoteでも過去にまとめや意見などを出すようにしている。
・FIN/SUM 2023 前半戦のまとめ ~冬なんて怖くない~
・(2020)「情報の工場」:貿易金融での大きな可能性
・(2019)Symphonyによる金融業務効率化最前線 ~メガバンク、証券会社の先行例
注目のセッション(アーカイブは4月14日まで)
今年8年目となるFIN/SUM、今年も興味深いセッションが目白押しで数多くのセッションを拝見させてもらったがその中でも特に印象に残っているのがこちら。
・(DAY1) 地方銀行のDX戦略〜選ばれる銀行になるために〜 powered by NEC (OKB大垣共立銀行、おきなわファイナンシャルグループ、東京スター銀行、愛媛銀行、NECが登壇。日本経済新聞社がモデレーター)
・(DAY2) ホールセール決済の将来像 powered by 日本銀行
- ホールセール決済の過去・現在・未来(日本銀行登壇)
- ホールセール決済の現在の課題(トレードワルツ、JPモルガン、SBIデジタルアセットホールディングス、三菱UFJ銀行登壇。明治大学がモデレーター)
- ホールセール決済の将来像(三井住友フィナンシャルグループ、明治大学、早稲田大学、日本銀行登壇。東京大学がモデレーター。)
・(DAY2) RWA(リアルワールドアセット)の衝撃(Ginco, G.U. Technologies、Secured Finance AG、金融庁が登壇。金融庁がモデレーター。)
・(DAY2) 三井物産のデジタル金融戦略(三井物産が登壇。)
・(DAY3) ~保険会社xスタートアップ~ プロテクションギャップへの対応(三井住友海上火災保険、Marsh、Plug and Play、Tractableが登壇。OECDがモデレーター。)
・(DAY3) 地方金融の将来:人材育成とAI時代のデータ活用(金融庁、高知銀行、コンコルディア・フィナンシャルグループ、信金中央金庫登壇。DataRobotがモデレーター。)
・(DAY4) 地銀xイノベーション拠点としてのシリコンバレー(静岡銀行、浜松いわた信用金庫、米国富士通研究所、金融庁登壇。Sozo Venturesがモデレーター。)
(ちなみにFIN/SUMは4月14日までアーカイブ公開中。来年から是非もうちょっと長く公開してほしいです。。。)
ホールセール決済への注目
DAY2の午後の多くの時間を使って行われたホールセール決済に関するディスカッションはとても意味があった。主に「フィンテック」というとエンドユーザー向けの投資アプリであったり、送金や決済アプリと金融サービスの中の一般消費者向けの「外側」の部分が多い。
ただ金融のサービスの中では、内側のホールセールの世界(金融機関同士や金融機関と事業法人の取引など、B2Bとも意味が近い)での非効率がまだまだ多く、そこを解決しないと外側を変えただけでは可能な効率化は限られている。
実際にで出ていた話だと、トレードワルツ 染谷 悟氏が貿易金融の例を出していたのは
貿易金融のプロセスの中の問題例
輸出入の際、未だに取引情報が書類で送られているプロセスがあり、例えば横浜からベトナムへ書類がエアメールで送られている。そしてそれが遅れると下流のプロセスも遅れる。
このような問題はエンドユーザーのUI・UXの変化では解決ができず、B2Bの業務のフローの効率化が必要になる。そして、そのB2Bの業務のフローというのは取り扱うデータもプロセスも複雑な場合が多く効率化することも困難であり時間が必要であることが多い。またB2Bの業務フローは一般消費者からの目からも見えにくいので、一般消費者向けのUI・UXほど重要性の割に注目を受けられないことが多い。なので今年のFIN/SUMで、ここに注目しホールセールの決済の過去・現在・未来について徹底的にディスカッションをしたことの業界への貢献度は高い。
同じような話で三菱UFJ銀行 渡邊 仁氏が出していた例は
法人向けの決済業務の現在
・現在の仕組みの中で合理的に動いている
・現在以上効率化するための問題としては取引情報と決済情報が分断されている
このような問題もエンドユーザーのUI・UXの変化では解決できず、B2Bの業務フローの効率化が必要になるのである。
金融市場の技術が世界を飲み込む
ではこのような複雑なホールセール・B2Bの業務フローの効率化というのは進まないのだろうか?
・決済と証券を同じ台帳に乗せないといけない
・資産クラス別の台帳ではなく、クロスアセットの台帳ができないといけない
・コルレスバンキングのプロセスのSTP化の必要性(注:STP化とはStraight Through Processing。主に発注・売買成立から決済に至るまでの過程を、人手を介さず電子的に行うこと)
など色々な問題が定義されていた。ここで期待をされるのが「金融市場の技術」の活用である。
・株、債券、為替、コモディティ、デリバティブ、オルタナティブなど多数の複雑な資産クラスが取引され
・24時間価格を影響するイベントが世界中で起こり、市場の価格が動き
・世界中の情報をプロセスして速いスピードで投資やリスク対応の決断をしないといけない
など独特の膨大な情報量、スピード性、リスクの推移などを持っている金融市場に対するチームはその独特なニーズからとても先進的な技術や内製化するチームを持っている(市場エンジニアリング部、グローバルマーケッツ・テクノロジー部などと呼ばれたりするチームである)。このようなチームが持っている技術の例は以前書いた2つの記事が参考になるかもしれない。
このような金融市場特有のクラウドの活用、データ活用、リスク分析、顧客向けプラットフォームの技術などというのは金融機関の狭い市場部門でしか必要ないと思われていたのが、今回ディスカッションされているホールセール決済の世界で見ている問題は市場部門で解決してきた問題と近いものが多く、「金融市場の技術」が活用できるところが多いと考えられる。
以前マーク・アンドリーセン氏が言った「Software is eating the world.(ソフトウェアが世界を飲み込む)」と同じようなコンセプトで金融の世界は今まで狭い市場部門でしか活用されていなかった金融市場の技術が色々なB2Bの業務フローやB2Cにまで活用されるようになり、金融の世界では「金融市場の技術が世界を飲み込む」と自分は信じている。
地方金融の台頭
今年のFIN/SUMでもう一つ見られたトレンドは地方金融のイノベーションやデータ活用、デジタル戦略などをカバーするセッションの多さである。
各地方金融が
・スタートアップとの協業
・勘定系をクラウドと接続した
・データサイエンティストの雇用
・シリコンバレーの拠点での成果の発表
など発表されており、1年前とでも大きな違いが見ることができた。またDAY3の「地方金融の未来: 人材育成とAI時代のデータ活用」ではFIN/SUMのセッションで唯一会場の中でスーツではなくパーカーや私服を来た若者を多数見ることができ、「新しい世代」がFIN/SUMの空気に入り始めているという希望を感じた。
またこのような地方金融のイノベーションやデータ活用の動向には、上のイベントでも登壇している金融データ活用推進協会(FDUA)の存在とイニシアティブが大きく貢献しているというのは想像しやすい。
ドメスティックな観点でドメスティックな人材が作り上げているFIN/SUM。今年はだからこそ見える大手だけではなく、地方金融を含める日本のすべてで起こる金融の興奮を感じさせられるFIN/SUMにであった。引き続きこのような大事なトピックに対して考え、ディスカッションをする機会を作ったFIN/SUMには感謝。
自分達は何をするのか?
「金融市場の技術が世界を飲み込む」という話をしたが、Symphonyはまさに金融市場で生まれた技術、プラットフォームである。このような技術を持って「広く」そして「深く」多くの業界の業務フローの効率化を進めて行くのは「壮大なJapan Fintech Week(金融・フィンテックの祭典①)」でも述べた通りだが、それこそが「金融市場の技術が世界を飲み込む」良い例だと信じている。
そして自分達も地方金融との取り組みも既に始めている。
Symphony Innovateカンファレンス!
そんな「金融市場の技術が世界を飲み込む」体現するネットワークSymphonyのコミュニティのフラッグシップのカンファレンスが4月18日(木)ニューヨークで開催です。世界の先進的な金融機関そしてソリューションプロバイダーなどが最新の「深い」業務フローの効率化、共創する形など発信します。米国時間に開催ですが日本からもアーカイブなど見られるのでご興味あれば是非サインアップしてみてください。
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またニューヨーク(もしくは米国)在住などで現地で参加して、熱気を感じネットワーキングもしたいという方は是非ご連絡ください。
(あとがき)フィードバックも金融業界の効率化などの仲間も募集しております
いかがだったでしょうか?是非このnoteへのフィードバックも聞きたいし、こんな目線での金融業界の効率化など一緒に仕事をするパートナー企業や個人募集しております。
意見交換をしたい、一緒に仕事をしたいなどお声がけしていただければとても嬉しいです。SymphonyでGen Ueharaまでメッセージを送っていただいてもかまわないし、こちらどちらからコメントでもフォローもよろしくお願いいたします。
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