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「情報の工場」:貿易金融での大きな可能性

各業界で今までになかったデジタル化への動きがものすごいスピードで起きているが、その中でも今注目が受けているエリアが貿易金融である。商品、カネ、書類で動いているプロセスと呼ばれ、しかも書類の原本が物理的に動かないといけないので海外では特に郵便が遅れたりする現在ではとても問題が多いく、商品が動けなくなるので商品の輸出・輸入や消費者へのインパクトも大きい。

その貿易金融の世界でこちらの提唱する「情報の工場」がどのように動くかなどを考察してみたい。

貿易金融について昨今の情報

今年のFIN/SUM Blockchain & Businessでの「世界のユースケースに見るブロックチェーンの可能性」のセッションは色々なユースケースが見れてとても良かった。

以下のNTTデータのプラットフォームの件などを見ても、日本の金融、商社、IT企業もやはりこの機会に前進したいという動きが見える。

そしてこのnoteを書こう書こうと思っていた間にFinolabから素晴らしいビデオ、「貿易金融の電子化推進 ~ブロックチェーンの活用~

もちろんこの貿易金融は日本だけの問題ではない。シンガポールなど金融機関でも貿易金融の業務のハブが多く、11月2日のFT Commodities Asia Summitでも貿易大臣であるChan Chun Singがキーノートスピーチでデジタル化の重要性また信用の大事さ(シンガポールではこのエリアでのいくつかのスキャンダルが続いているため)などについてコメントしている。

さて以前書いたヒトと機械が協業できる「情報の工場」のコンセプト(2020年FIN/SUMを見て:「情報の工場」でのヒトと機械のつながり)であるが、「情報の工場」とはヒトと機械が今よりずっと簡単に協業でき例えば以下の様なことが簡単に組織化されてできる環境である。

① 機械がヒトに構造化された情報から必要な情報を通知してあげる
② その情報をもとにヒトがヒトとチャットなどを使い非構造的なコミュニケーションで情報をプロセスをする
③ その結果がまた構造化されて必要なヒト・機械に情報の通知、もしくはまた工場に格納されないといけない

貿易金融とそのチャレンジ

以下の図の様な複雑な貿易金融のプロセスの難しさを短い文章で語ることはとても難しいが、いくつかのテーマに分類することは可能である。

画像1

https://lab.pasona.co.jp/trade/word/97/ より)

・プロセスの参加者・企業が多いこと:輸入者、輸出者、フォワーダー、銀行x2、船や航空会社、海外代理店、信用調査会社などなど。そして参加者が業界をまたいでいる。
・システムが乱立していること:社外プラットフォームと社内システム、またマニュアルのプロセスも多い。
・物理的な紙への依存度がとても高い。

そしてモノ(商品)、カネ、カミ(書類)が動いており、それとともにリスクが渡させれている絵というのは電子化が貿易金融よりは進んでいる場合が多い銀行・証券会社・運用会社などで行われている株、債券、為替、金利などの商品と大まかな仕組みは似ている。大きな違いは一つ一つの取引に関わる参加者がとても多いところである。ただそれでもなんとかして電子化や自動化そして物理的な紙の依存度を下げる方法を探さないと、昨今のコロナ禍でこの業界やプロセスの非効率さが浮き出しになった業界で前進どころか後退してしまうのである。

また貿易金融のフローの特質が参加者が多く、業界をまたいでいるという事は業界ごとのソリューションや数々の社内システムなどが存在し、ステークホルダーも複雑に多数存在し、エンドツーエンドの効率化がとても難しいという事になる。

共通の「情報の工場」に必要な機能

さてそんな参加者が多く、ステークホルダーが多く、複雑な貿易金融のフローをエンドツーエンドでの効率化にする「情報の工場」には何が必要だろうか?必要な順番に

・機能① セキュリティに一番厳しい業界でも活用できるセキュリティの機能、データの暗号化など
・機能② コンプライアンスに一番厳しい業界でも活用できるコンプライアンス機能、完全で変更できないアクティビティのログや、監視の機能など
・機能③ ヒトが「信じて」繋がれる機能(社外・社内)
・機能④ 機械や他のプラットフォームに簡単につながれる機能

少し違和感のある順番かもしれません。ただしこの順番がとても大事で、この順番以外には考えられないと思えるほどです。ステップをひとつづつ説明させてください。

機能① セキュリティ、機能② コンプライアンス

ついついユーザー向けの機能に集中しがちですが、一番最初に持っていないといけないのは実はセキュリティ・コンプライアンスの機能です。色々なプラットフォームが他業界で成功を収めて金融に入るのに一所懸命セキュリティなど後付けを試みるエリアですが、この部分というのは最初から土台に作られていなければあとから足すことはできません。紙の土台の上に美しいビルを建ててしまった後に、後付けでコンクリートでの補強などはできないのと同じイメージです。大抵の場合金融が最もセキュリティ・コンプライアンスの機能には厳しいので、ほとんどの他業界からのプラットフォームというのは金融に大きな展開を使用とすると歯止めがかかり「顧客情報は入れない」「機密情報は入れない」などの制限がかかってしまいます。その様なデータの制限が大きくかかってしまうと「情報の工場」に情報がないことになるのでこのコンセプトは動きません。なので一番最初に一番厳しい業界で入れるセキュリティ・コンプライアンスの機能を土台に作っておく必要が必須なのです。繰り返しますが、先に土台を作らずに後から足すことはほぼ不可能です。ここの部分だけで本が書けるぐらいなので今回は軽く触るだけにしておきます。

機能③ ヒトが「信じて」繋がれる機能(社外・社内)

工場がフル自動化されているのであれば「ヒト」は必要でないのでは?何故3番目にヒトに対する機能?などというご質問もあるかと。金融のフローでは複雑なプロセスや確認も多くヒトの作業がなくなるということはありません。貿易金融でも

・輸出交渉
・L/Cの内容の確認・交渉
・L/Cのアメンドのプロセス
・L/Cのディスクレ対応
・クレームのプロセス(商品クレーム、マーケットクレーム)

などなど確実にヒトが交渉に入ってくるプロセスというのは存在します。そしてこの対話というのは主に2社間や多社間で行われるので、プラットフォームがヒトのディレクトリーを持って、ヒトとヒトが繋がれる機能を持っていることが必須です。

そしてその対話の方法は当然今回のコロナ禍でも証明されたようにメールや電話では機能せず、リアルタイム性を持ちながらも非同期で時差で離れている海外などとの会話もスムーズに可能にするチャットが必須という事になります。

①、②のセキュリティ・コンプライアンスのハードルがとても高い金融では実はこのステップ③ヒトが「信じて」繋がれる機能(社外・社内)は想像よりはるかに難しく、金融でこれを可能にしているプラットフォームというのは実は数社しか存在しません。弊社Symphonyはその中でも以下の貿易金融主要プラットフォームのリストの中の主要参加行でリストされている世界の大手金融機関のほぼ全社で既に導入経験があり①、②、③、④のステップを可能にできるプラットフォームなので、そのネットワークを活用して自信を持ってこの「情報の工場」コンセプトへの貢献をしています。

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(Finolab「貿易金融の電子化推進 ~ブロックチェーンの活用~」より)

機能④ 機械や他のプラットフォームに簡単につながれる機能

1), 2), 3)と出来たところでやっとでてくるのが他のプラットフォームなどとつながる機能です。何故これが最後?と思うかもしれません。多くのプラットフォームが連携を可能にしているじゃないかと。

「情報の工場」の観点からだと複雑で重要なフローをエンドツーエンドで繋いでいかないといけないので、繋がないといけないシステムは取引のプロセスの中でとても重要かつ慎重に扱わないといけない顧客管理システム、価格システム、在庫システムなどなどです。過去に金融でこのようなシステムとクラウドのプラットフォームの連携などを試みた方たちであれば(そしておそらくその大半は可能ではなかったと想像されます)このエベレスト並みのハードルの高さをご理解頂けると思います。

そのような重要なシステムにコントロールされた社内・社外から繋がるためには、とても高いレベルの① セキュリティ ② コンプライアンスの機能があり、③ 機械と一緒に仕事をする人間が繋がる仕組みが必要なので、この①, ②, ③, ④の順番になるのです。

ここで「情報の工場」のコンセプトは既存の貿易金融のプラットフォームと対立するのか?もしくはRPAなどとも対立するのか?という質問は良くいただきますが、対立するわけではなく以下の例のように共存であると理解しています。

・マッチングや在庫、価格などの情報が既存の貿易金融プラットフォームに保管さており、ヒトの確認や交渉のために「情報の工場」にデータを動かして作業をする。その後マッチした情報はまた貿易金融プラットフォームに格納される。
・既存の貿易金融プラットフォームの中でワークフローがデザインされており、ヒトの決断や再鑑などが必要な時に「情報の工場」にいるヒトにシグナルが送られてくる。
・「情報の工場」でつながる機械やアプリがすべてAPIを持っているわけではないのでRPAでつながる、もしくはシークエンスを組むなども可能。

既存の貿易金融プラットフォームも「情報の工場」と接続し一部となる重要な基盤であり、RPAというのは機械とヒトが流れるように協業をする「情報の工場」の中で働く機械として良くある形だと考えられます。

「情報の工場」の可能性

そこでこの機能①、②、③、④の順番に作られた「情報の工場」の可能性のデモを二つ程出してみたいと思う。

(BFAM Partners and Goldman Sachs: Automating RFQs(英語))

こちらはヘッジファンドが証券会社10社以上に価格の引き合いを出すプロセスをSymphony上で可能にした例である。

・機能① セキュリティ、機能② コンプライアンスがカバーされ、金融で活用されているプラットフォームなので重要な取引情報、価格情報、在庫情報などを「情報の工場」に出すことができる
・機能③ 既にヒトとヒトが繋がれる機能があり、多数の金融機関がプラットフォーム上に存在するので、それを活用してワークフローを組み込むことができる
・機能④ 他のプラットフォームとつなげる機能が輝くのがその下で①セキュリティ、②コンプライアンスがカバーされているから、なのでヘッジファンド側の社内のシステムと安心して繋ぐことができコピペを多用し色々な画面から画面に情報をコピーしなくてはいけなかった複雑なプロセスだったのが現在ではコピペがゼロのプロセスに生まれ変わっている。また10社以上の証券会社も、足並みをそろえる必要なく自分のペースで自社のリスクシステムや価格システムと繋ぎこむことが可能。 自分のペースで機械とヒトが協業する形を作ることができる。

(BlackRock & BNP Paribas present Whitesand Bot - 21分40秒より(英語))

こちらは大手証券会社と運用会社の間で取引の照合を運用会社側のシステムと繋ぎ簡単にしている例。機械(チャットボット)が関係のあるメンバー(2社間)のチャットルームを自動に作ってあげたり、照合が完了をしたら次のステップで必要なメンバーに情報を流してアクションを促してあげるなど、こちらも機能① セキュリティ、② コンプライアンス、③ ヒトとヒトが繋がれる機能があるので④の社内システムとの連携や顧客情報の展開が可能になっている。こちらも機械とヒトがサポートをしあいながら流れるように「情報の工場」で働く姿。先ほども挙げた輸出の交渉、L/Cのアメンドやディスクレ、クレームのプロセスなども同じようなフローが活用できると考えられる。

今回はここまでです。まだまだ深堀りをしたいのだが、あまり長くなると読む人がいなくなるのでもっと深堀り興味がある方は是非ご連絡をいただければコーヒーでも飲みながらお話しやホワイトボード是非できればと思います。既に国内・国外の大手金融や貿易金融系プラットフォーマーとも会話はスタートしており、海外の貿易金融系プラットフォーマーがSymphonyの活用もスタートしていますが、まだまだ道のりは半ばです。

フィードバックも新しい仲間もお待ちしております

まだまだ「情報の工場」のコンセプトにフィードバックを頂きたいです。貿易金融のエリアで意見交換をしたい、一緒に仕事をしたいなどお声がけしていただければとても嬉しいです。

SymphonyでGen Ueharaまでメッセージを送っていただいてもかまわないし、こちらにコメントでもツイッター(@gen0707)経由でも構わいません。

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