ユニバーサルデザインタクシーを広めるためには・・・
現役タクシードライバーである私が、日本に広がりつつあるユニバーサルデザインタクシーの問題点と解決策を考えていきます。
私自身、元福祉職であり、社会福祉士と介護福祉士という二つの福祉系国家資格を所持しております。
また、大学でも福祉を学び、20年以上前から公共交通や地域福祉を考えてきました。
当時、路線バスに低床で車いすのまま乗れるバスが導入され始めた時期でした。
そしてようやく、タクシーも車いすのまま乗れる時代になってきました。
でも、課題はとても多い。
それらを少し書いていきます。
日本のタクシーは、現在トヨタ製の「ジャパンタクシー」の導入が進んでいます。
この車両は、国の方針に従って、車いすの方でも利用できる「ユニバーサルデザイン(以下UD)」となっています。
ユニバーサルデザインタクシーの日本第一号は日産のバネットでしたが、初代タクシー用バネットはすでに廃盤。
しかし、2024年7月に現在発売中のバネットが再びUD認定をされました。
その他、日産のセレナやトヨタのシエンタの福祉車両もUD認定されています
。
ただし、実際にUDタクシーとして走っているのはジャパンタクシーが多いですね。
シエンタも街中で見かけますが、そのほぼ全てがUDでは無くて一般車両。
初期型バネットが今でも走っていることはありますが、、、。
さて本題。
UDタクシーが走るようになってすでに数年経っていますが、未だに大々的に「車いすのままで乗れる」と宣伝されることは皆無と言って良いでしょう。
国交省や運輸局のホームページやタクシー会社のホームページを見れば宣伝されている事もありますが、導入しているタクシー会社でさえ「ジャパンタクシーを導入」している事は書いてあっても、「車いすのままで乗れる」ことは書いていないことが多いです。
それは何故か?
答えは簡単で、車いすのままで乗っても同じ運賃しかお客様からは頂戴出来ないので、タクシー会社の経営の足を引っ張ってしまうからです。
足を引っ張ってしまうというか、「完全に赤字の仕事」になってしまうと書いた方が正しいでしょうか。
何故赤字なのか?
それは、時間効率が関係します。
一般の仕事であれば、お客様の乗降時間は数秒です。
荷物などがあり、多少お手伝いが必要なお客様でも1分程度。
しかし、車いすの方の乗降は、ジャパンタクシーだと10分以上かかります。
10分あれば、他の仕事が1回仕事が出来ます。
極端な言い方をすれば、2回分の仕事の時間を使って、1回分の売り上げしかあげられない。
ただでさえ利益率が5~10%しかないタクシー運賃なのに、半分の売り上げしかあがらなければ、タクシー会社は潰れます。
そして、タクシードライバーの給料は、売り上げに応じた歩合制。
売上が半分になれば、給料が半分になります。
全ての仕事が車いすの仕事ではないでしょうが、たった1回でのその仕事をすることになれば、確実にその分の売り上げが減り、給料が減ってしまうのです。
これは同じ公共交通のバスや電車と違うところ。
バスや電車で車いすの方の対応をしても、その対応をする人の給料は月給制ですから減りませんよね。
また、バスや電車の会社にしても、数分の遅延はあるかもしれませんが、それが会社の売り上げに関わることはほぼありません。
ここまで書くと、私がUDタクシー排除者のようになっていきますが、決してそうではありません。
むしろ私は、今後はUDタクシーこそがタクシーの生き残っていく手段だと思っています。
では、その生き残っていくために、必要な事は何なのか???
それは、「行政との共同作業」だと思っています。
気持ちの部分では、タクシー業界が「UDタクシーにシフトする」ことが必要な事は、ある程度認識されています。
しかし、先ほども書いたように「お金の部分」でタクシー会社や個々のドライバーで出来る範囲を超えています。
現状の運賃の中にある「障害者割引」や「運転免許返納割引」だけでも、実はタクシー会社の経営を苦しめいています。
ここで「行政の力」が必要だと私は考えます。
今現在でも、多くの自治体で「タクシー利用助成」が行われています。
助成額や方法はさまざまですが、一番多いのはタクシー乗車時に「初乗り分の補助」をすることでしょうか。
この行政の補助に「UDタクシー利用補助」というのを導入できないのかと考えます。
一般タクシーの利用補助が「初乗り分」なら、UDタクシー(車いすのまま乗車)利用補助は別途で「1000円」とか「1500円」とか。。。
要するに、乗降時間分の費用(人件費等)が補助されれば、タクシー会社もタクシードライバーも納得してUDタクシーを広めていく事が出来ると考えます。
一部のタクシー会社では、会社独自で手当てを支給しているところもあるようですが、それでは根本的な解決になりませんし、多くの経営が苦しいタクシー会社では「担当してくれるドライバー頼み」になっていて、ドライバーが「嫌々」その業務に就いています。
これでは、ドライバーは幸せになりませんし、結果お客様も幸せになりません。
こんなことは、私がここに書かなくても、国もタクシー会社のお偉いさんも分かっているでしょう。
でも声をあげられない。
しかし、これは声を上げなければ解決しません。
UDタクシーを広めるために、タクシー会社もタクシードライバーも、そして何より利用するお客様が幸せになるために、お互いに腹を割って解決策を見つけたいですね。