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eスポーツ古典落語『エイムほめ』
えー、毎度バカバカしいお笑いを一席。「煽りで炎上、FPSの華」なんてぇことを江戸の昔から言いますが、シューターというジャンルは江戸の庶民の間でも盛んに行われていたそうです。ランクが高いってのは今も昔も自慢の種だったようで……。
「与太郎、おい! 与太郎」
「どうしたい? お父つぁん」
「どうしたじゃねぇよ。お前ぇもはたちになったんだからいい加減働いたらどうだい? そんなんだから周りから与太郎って呼ばれんじゃねぇか」
「へへっ。みんなオイラのことを脳みそブロンズ4だって褒めてくれんだ」
「褒めてねぇんだよ、そりゃ。しっかりしなきゃいけねぇぞ。お前、渋谷の春おじさん、知ってるな」
「ああ、まえに会ったことあるな」
「おう、そんでよ。お前、一人で渋谷に行けるな? えらいえらい。いやな、おじさんこないだプレデターになったらしくてな。褒めに行きてぇんだが、お父つぁんちょっと忙しくてな。お前、代わりに行ってくれねぇか?」
「エイリアンVSプレデターだって? ありゃ褒められたもんじゃねぇ。クソ映画だったぜ」
「いやいや、そんなことはねぇよ。アレはああいうもんとして観れば……いや、そうじゃねぇ。映画の話じゃねぇんだよ」
「じゃあゲームかい? アレはなかなかおもしろかったな。エイリアンとプレデター、そこに人間も入れて三すくみの戦いがアツくてねぇ」
「そうそう。あれは面白かった……って違うんだよ。FPSはFPSでもエーペックスレジェンズの話よ」
「春おじさん、セックスフレンズなんているのかい? うらやましいねぇ」
「エーペックスだよ! エーペックス!」
「エーペックスでプレデターになったんだな。そりゃめでてぇ」
「おう。急にわかりやがったな。まぁいい。それで褒めに行ってくれんのかい?」
「そりゃ構わねぇけど、どうやって褒めるんだい?」
「そこに気がつきゃぁ立派だ。だいいち、おめぇはよその家に行っても挨拶をしたことがねぇ、男がはたちにもなって挨拶しねぇなんて、そこが一番いけねぇ」
「挨拶? 死体撃ちかい?」
「死体撃ちが挨拶ってぇどこの国の文化だい、まったく。春おじさんに死体撃ちなんてすんじゃねぇぞ。大会で名前呼ばれなくなっちまうぞ」
「へぇ。おじさん、配信で有名なわりにやることはちっさいねぇ」
「お前ぇ、そんなこと春おじさんに絶対言うんじゃねぇぞ?」
「そんで、挨拶はどうする?」
「承りますれば、こちら様では、プレデター達成でおめでとうございます。と、これが挨拶だ。言ってごらん」
「承りますれば、こちら様では、プレデター達成でおめでとうございますと」
「”と”は要らねぇんだよ、”と”は」
「そうかい。それで?」
「そしたら次はエイムを褒めるんだな」
「エイム? なんでエイムなんだい?」
「そりゃあよ、上手ぇやつらはエイムが良いに決まってんだ。エイムを褒められて悪い気はしねぇわな」
「なるほどねぇ。どう褒めるんだい?」
「そうだなぁ。まずは、振り向き何センチですか? って聞いてみな」
「そんなもん聞いてどうすんだい?」
「まぁ待て。そしたら相手がなんか答えんだろ? そしたら何でも良いから、そんなにハイセンシでよく当てられますね。っとこうだ」
「何センチでもそう言うのかい?」
「おうよ。こっちはローセンシなのにからっきしです。って言ってやったら喜ぶからよ。やっぱ感度が低いより高いほうが当てるのが難しいからなぁ」
「なるほどねぇ。それから?」
「そうだなぁ、春おじさん、なんでも新しいマウスを買ったらしいからね。ついでに褒めてやると良いよ」
「ほう? どんなマウスだい?」
「なんでも超軽量マウスで、軽くするために穴っぽこがポコポコ開いてるらしいんだな」
「そんな穴だらけで大丈夫なのかい?」
「そりゃぁ、心配あるめぇ。はあ、こりゃ穴が多くて風通しがよくて気持ち良さそうですねぇ。とでも言ってやんな」
こうして与太郎は一人、渋谷へと向かいました。
「あのー、ごめんください」
「おう! 与太郎じゃねぇか。久しぶりだな、今日はどうした?」
「承りますれば、こちら様では、プレデター達成でおめでとうございます」
「おっ、偉いな、挨拶を覚えたか」
「エイリアンVSプレデターもよく見りゃいい映画だそうで」
「そりゃ一体なんの話だい?」
「なんでもセックスフレンズがおめでたっていうことで」
「おいおい、そんなもんはいないよ! 変なこと言うじゃないよ、カカアに聞かれたら大変だ」
「ああ、違った。いやぁね、春おじさんがプレデターになったってことで、エイムを褒めに来たんだ」
「なんでそれを早く言わないんだよ。さ、お入り」
「えー、それじゃあまずは、振り向き何センチですか?」
「どうかなぁ。そんなもん測ったことはないな」
「さすがですねぇ。こっちはローセンシなのにからっきしです」
「いや、だからわかんねぇんだが。お前ぇさん、台本でも読んでんのかい?」
「いやいや、やっぱり感度が低いより高ほうが気持ちが良いと言いますからなぁ」
「マウスの話してんだよな?」
「ところで新しいマウスを買ったそうで」
「おっ、こりゃまたずいぶんと情報が早いじゃねぇか。おどろいたねぇ。昨日買ったばかりだよ。ほら、コイツだ」
「こりゃあ穴っぽこだらけだねぇ」
「いや、そりゃ前使ってたやつじゃねぇか? これはNP-01だぜ。見ての通り穴なんてねぇよ」
「えぇ? そりゃ大変だ。キリかなんかないかい? 急いで穴あけなきゃ」
「馬鹿言うんじゃないよ。買ったばかりだって言ったろ? なんで穴なんか開けちまうんだよ」
「そりゃ穴があったほうが気持ちがいい」
お後がよろしいようで。
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