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あるスタッフとの井戸端会議
先日、クラブオフィスで仕事をしているとき、営業スタッフからある相談を受けました。
「ある団体に対価として提供しているサービスが、果たしてスタジアム内に看板である必要があるのか、実は疑問を持っているんです」
ここから軽く1時間を超える即席会議となったのですが、このときの内容を記しておこうと思います。
自己紹介を兼ねて
私はこのクラブに来た初日に、フロントスタッフに向けて約1時間のプレゼンをさせてもらいました。
クラブの中で事業を横串で見ていくために、瀬田元吾がドイツでどのような仕事をしてきたのか、フロントスタッフに理解してもらった方がきっと仕事がしやすくなるだろう、というクラブ首脳陣の判断から、いきなり長めの話をさせてもらったことになります。
ほんとは15分くらいで、と言われたのですが、やるなら本気でとしっかり資料を作り、どどーんとやらせていただきました。
そこではドイツのプロクラブであるフォルトゥナ・デュッセルドルフで12年に渡って経験してきたことをザックリ説明させてもらいました。
外国クラブの中に日本デスクを設立した目的、その時に立てた目標、その目標に対してどのような取り組みを実際に行ってきたのか。
そしてその中で私発信で実現させてきたことや、そのクラブにいたからこそ見たり経験できたことも交えて色々な事例も紹介しました。
新年の初日のミーティングでいきなり1時間を超えるプレゼン、しかも動画あり、アニメーションありのパワポで40ページ近い資料でしたから、フロントスタッフメンバーはどう感じたのか、正直未知数ではありましたが、仕事をしていく中で、徐々に「あのプレゼンの中にあった話ですが、、、」と声を掛けてきてくれるスタッフが出てきており、今回もその1つから始まった会話でした。
客観性と主観性
話を戻すと、相手への対価がこれでいいのか疑問を持っている、という相談。
これはすごく大事な疑問だと思います。
営業担当の彼に取ってのミッションは、クラブを支援してくれる企業・団体を獲得すること。
KPI(俗に言う達成目標値)を考えると、とにかく一社でも多くの成約が大事になりがちですが、その中で忘れてはいけないことは、相手側にとってスポンサーしていただく、お金を出していただくということがどういう意味を持つのかを考える必要があるということです。
このご時世、費用対効果がどれくらいあるのかを実際に示すのは非常に難しいと思います。
それでも市場価値を示す方法がないわけではありません。
市場価値というものは、往々にして相対性で導き出されるので、他クラブや他イベントなどの集客数、視聴数と比較し、その中からこれくらいの価値がありますと示すことになりますが、じゃあ御社の広告看板が(計算上は)トータル1000万人の目に入りました!と言ったところで、それで商品が幾つ売れたのか、を証明することは非常に難しいことです。
そのためにアンケートを取ったり、ヒアリングをしたり、コラボ商品を作っておいてそれを注文してくれた数を集計したり、クラブの会員割引をつけることでクラブの広告を通じて買ってくれた顧客をカウントしたりと、何とか目に見える数字を集めるわけですが、宣伝効果という意味ではやはり数字では表しきれないと言わざるを得ません。
そうなると相手側にとって重要なことはなんなのか。
そこにはもう一つ、「想い」があると私は思っています。
このクラブはどんな想いを持って今シーズン戦っていくのか、どんな未来を描き、ご支援いただく方々にはその想いに賛同していただいたり、協働していただいたり、喜怒哀楽も含めた歩みに価値を感じていただく必要があると思っていますし、費用対効果と同じくらい、この部分を大切にしています。
つまり、客観的な数字と主観的な想いを、営業の際には持ってほしいです、というお話。
この相談はまさに、相手への対価がもっと別の形にする方が相手にとってもより有意義で、また我々の価値を高められるのではないかということでした。
こういうマインドセットが起こっただけでも、最初のプレゼンに意味があったなと。
具体的にはプレゼンの中で、商工業者向けの非常にフランクなVIPラウンジを作ったという話を紹介し、そのラウンジは非常に活気があり、人々がガヤガヤと交流する様子を動画でお見せしたのですが、それがトリガーとなって浮かんだ疑問だったそうです。
営業スタンス
私はドイツでは営業だけではなく、広報、ホームタウン、チケッティング、マーチャンダイジング、スカウティングなどを同時進行で経験してきました。
日本デスクとは、まさにミニマムフロントを実現していた、という感じです。
そうすることでクラブのフロントの動きを横串で見れていましたし(正確には時間をかけて見て感じて学んでいったということですが)、だからこそドイツのクラブであっても、クラブ内のセクションごとの情報共有が問題であることを感じていました。
重複にはなりますが私はそれを、対日本ということで全体的に取り組んでいたので、1つの案件に対してホームタウン的な視点も持っていれば営業的な視点も持っていて、これをどうやって伝えていこうかという広報的な視点も常に持っていました。
つまり1つの案件に対しての理解度、コミット度が周りのスタッフよりも高かったと思いますし、それは意図的にそうやって取り組むようにしてきました。
日系企業に営業に行かせていただくときも、常に複数の視点を持って話をしてきましたし、それを表現するための営業資料を作るようにしていました。
私ももちろんたくさんの失敗経験があります。
社会の大先輩である方々にコンコンと説教されたこともありますし、正直それで悔しくて涙したこともあります。
でもそういう経験をしたことで次の改善、対策を講じることができるようになりましたし、自分なりの考えとスタンスをある程度確立することができました。
もちろんその全てがこの水戸で、または日本で通用するとは思いませんので、その部分は柔軟に学びながら私も成長していかなくてはと思っています。
営業スキル
今回の“井戸端会議”では、営業に行った時にどんな1時間を過ごしているのかという話もしました。
セールルシートが本当に営業スタッフの皆さんにとって使いやすいないようになっているのか、また彼らが全ての内容を理解し、数字を暗記し、詳細まで腹落ちした状態で営業の場に立てているのかという質問もさせてもらいました。
これに関しては、敢えて書かせていただくと、そういう視点で資料とまだ向き合いきれていなかった点もあったのではないかと思います。
でもそれに気付けたという意味ではこれは彼の伸び代であり、ここからのさらなる進化に期待ができるということでもあります。
大事なことは自分の現在地を知ること、そしてクラブと共に自分も成長していこうという純粋で飽くなき成長欲求を持つことが非常に重要です。
日本サッカーの父と言われるディトマールクラマー氏の通訳をさせていただいたとき、当時89歳だったクラマー氏が「私は今日も成長したい」とおっしゃっていたことを今も非常に印象的に覚えています。
クラマー氏に比べれば我々なんてまだまだ青二才ですし、我々が成長の歩みを止める理由なんてありませんから。
話を戻しますが、私は営業の際、出来るだけプロジェクターを使用します。
そこでクラブを知っていただく、想いを伝える部分をしっかりとやります。
そして客観性を示す部分はお伝えしつつ、自分達が目指す未来像をしっかりとお見せします。
今の水戸ホーリーホックはこうだから価値がない、のではなく、こんなストーリーを描いている水戸ホーリーホックは面白い!そう思っていただくことが第一歩です。
そして一緒に歩んでいただく仲間、ファミリーになっていただきたいということも伝えます。
自分たちだけのマンパワーでは到底ビッグクラブには追いつきません。
しかし多くの方々の支援と熱量があれば、それが1つの強固なチームになれば、どんな強敵とも戦えますし、倒すチャンスが生まれます。
ドイツ杯という大会(日本で言う天皇杯)では、4部や5部リーグに所属するクラブが1部や2部のクラブをジャイアントキリングすることがよくありますが、まさにそれ。
フォルトゥナとしてジャイアントキリングをしたりされたり、どちらも経験しており、その時の感情もはっきり覚えていますが、これがもう痛快だったり、めちゃくちゃ悔しかったり。
そんなことをパートナー企業の方々と共有しながらファミリーが醸成されていったということを、よく覚えています。
だからこそ営業の際にはそう言う視点を持ってはどうか、という話をさせてもらいました。
総合的な成長が不可欠
新しい価値を作っていく、これが今、水戸ホーリーホックが向き合っている最大のミッションです。
クラブのブランドプロミスである「新しい原風景をこの街に」はまさにそれを示すワードですし、MVP(メイクバリュープロジェクト)がその際たる取り組みと言えるかと思います。
そのためには営業トークだけでは足りません。
実際にクラブが目指すビジョンが重要であり、それを誰もが理解し、同じように話せなくてはいけません。
そしてそれが、関わる全ての人たちの共有理解になっていく必要があります。
私も新参者ですから、もちろん水戸のことを日々学び、吸収していかなくてはいけませんが、それは既存のスタッフ然りです。
選手が監督がコーチングスタッフが、フロントスタッフがアカデミーの選手やコーチングスタッフが、チームがクラブが、ファンが街がホームタウンがもっともっと成長して繋がっていけば、水戸ホーリーホックは凄いクラブになれると確信しています。
チャンピオンクラブはそこからさらに成長するということだけでも大変なことですが、水戸ホーリーホックは伸び代が多いからこそ、楽しみなことがいっぱいです。
そんなことを感じたというのもまた、このクラブにお世話になると決めた理由の一つです。
今日はある営業スタッフとの何気ない会話からの井戸端会議の内容とその想いを紹介しました。
頑張るときはいつも今
瀬田元吾