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ストックオプション課税の構造

ストックオプションが無償で発行される場合の課税関係

ストックオプションを無償発行でも株主だけに持株比率に応じて一律に割り当てる場合、株主間に経済的利益の移転は生じませんし、付与時も行使時も経済的利益は発生せず、課税関係は生じません。
一方、ストックオプションを第三者に付与する場合、ストックオプションをもらったストックオプション付与権者に経済的利益が生じます(経済的利益とは、株式の時価とストックオプション行使価額との差額です)。

第三者に新株予約権を無償付与した場合、付与権者に経済的利益が生じますが、一定の要件を充足しているか否かで、課税される場合と課税されない場合に分かれます。

税制適格ストックオプションと税制不適格ストックオプションの課税上の取り扱いの違い

ストックオプションを第三者割当する場合、課税上の取り扱いの違いによって、税制適格ストックオプションと税制不適格ストックオプションに分けられます。

第三者割当でも、税制上の要件を満たした税制適格ストックオプションについては、行使時には経済的利益について課税されず、権利行使によって取得した株式を譲渡したときに申告分離課税を行います。要するにストックオプション行使により取得した株式を売却するまでは課税が繰り延べられるのです。

一方、第三者割当で、税制上の要件を満たさない税制不適格ストックオプションについては、行使時(売却時ではなく)において経済的利益について課税されます(租税特別措置法 第29条の2 「特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等」)。

税制適格ストックオプションの課税関係

税制適格ストックオプションは、付与時も行使時も課税されません。権利行使して取得した株式を譲渡したときまで課税が繰り延べられます。株式譲渡時の課税は申告分離課税(源泉分離課税は認められません)となります。
租税特別措置法29条の2第1項に定める税制適格ストックオプションの要件は次のとおりです。

一 当該新株予約権の行使は、当該新株予約権に係る付与決議の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日までの間に行わなければならないこと。
二 当該新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間の合計額が、1200万円を超えないこと。
三 当該新株予約権の行使に係る1株当たりの権利行使価額は、当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社の株式の当該契約の締結の時における1株当たりの価額に相当する金額以上であること。
四 当該新株予約権については、譲渡をしてはならないこととされていること。
五 当該新株予約権の行使に係る株式の交付が当該交付のために付与決議がされた会社法第238条第1項に定める事項に反しないで行われるものであること。
六 当該新株予約権の行使により取得をする株式につき、当該行使に係る株式会社と金融商品取引業者又は金融機関で政令で定めるもの(以下この条において「金融商品取引業者等」という。)との間であらかじめ締結される新株予約権の行使により交付をされる当該株式会社の株式の振替口座簿(社債、株式等の振替に関する法律に規定する振替口座簿をいう。以下この条において同じ。)への記載若しくは記録、保管の委託又は管理及び処分に係る信託(以下この条において「管理等信託」という。)に関する取決め(当該振替口座簿への記載若しくは記録若しくは保管の委託に係る口座又は当該管理等信託に係る契約が権利者の別に開設され、又は締結されるものであること、当該口座又は契約においては新株予約権の行使により交付をされる当該株式会社の株式以外の株式を受け入れないことその他の政令で定める要件が定められるものに限る。)に従い、政令で定めるところにより、当該取得後直ちに、当該株式会社を通じて、当該金融商品取引業者等の振替口座簿に記載若しくは記録を受け、又は当該金融商品取引業者等の営業所若しくは事務所(第4項において「営業所等」という。)に保管の委託若しくは管理等信託がされること。(令19の3④~⑥)・(規11の3①)
七 当該契約により当該新株予約権を与えられた者は、当該契約を締結した日から当該新株予約権の行使の日までの間において国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう。以下この号及び第5項において同じ。)をする場合には、当該国外転出をする時までに当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社にその旨を通知しなければならないこと。
八 当該契約により当該新株予約権を与えられた者に係る中小企業等経営強化法第9条第2項に規定する認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画(次項第2号及び第4号において「認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画」という。)につき当該新株予約権の行使の日以前に同条第2項の規定による認定の取消しがあつた場合には、当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社は、速やかに、その者にその旨を通知しなければならないこと。

租税特別措置法29条の2

※会社法238条第1項は新株予約権の募集事項が定義されています。ストックオプション発行を行う場合、1~7号の募集事項を定める必要があります。

第238条 株式会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権(当該募集に応じて当該新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てる新株予約権をいう。以下この章において同じ。)について次に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)を定めなければならない。
一 募集新株予約権の内容及び数
二 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
三 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権1個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法
四 募集新株予約権を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)
五 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
六 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第676条各号に掲げる事項
七 前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第118条第1項、第777条第1項、第787条第1項又は第808条第1項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め

会社法238条第1項

税制不適格ストックオプションの課税関係

税制不適格でも有償ストックオプション


ストックオプションが第三者割当で有償発行された場合、新株予約権者は発行価額を払い込んでいるので、発行時に経済的利益は生じず課税されません。
ストックオプション権利行使時点も課税されません。取得した株式の売却時に課税されます。
ストックオプションを行使して取得した株式を譲渡するまでは課税されないのです。課税されない理由ですが、取得した株式を売却するまでは投資が継続しており、未実現利益だからです。
所得税基本通達48-6-2において新株予約権の取得価額と権利行使価額を株式の取得価額とすることとしており、投資継続しており、未実現利益であることが理解できます。。

48-6の2 新株予約権の行使により取得した株式(発行法人から与えられた令第84条第3項第1号又は第2号に掲げる新株予約権で同項の規定の適用を受けるものの行使により取得したものを除く。)1株当たりの取得価額は、次の算式により計算した金額によるものとする。(平14課個2-5、課資3-3、課法8-3、課審3-118追加、平18課個2-18、課資3-10、課審4-114、平18課個2-18、課資3-10、課審4-114、平28課個2-22、課審5-18、令元課個2-22、課法11-3、課審5-12、令2課個2-12、課法11-3、課審5-6改正)

所得税基本通達48-6-2

税制不適格(税制適格ストックオプション以外)の無償ストックオプション

第三者割当で適格ストックオプションの要件を満たさない無償のストックオプションは、税制上の特例措置が適用されないことから、新株予約権者に経済的利益が生じたとして行使時に所得税が課税されることになります。

参考
国税庁タックスアンサー No.1543 税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について


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