自然界から同性愛を学ぶ
GEMPではLGBTQ+に関わる歴史や社会的背景について幾つか投稿してきましたが本日は少し視点を変え、自然界における同性愛について紹介したいと思います。
〜自然界における同性愛は多種多様な生物で確認?〜
動物における同性間の性行動は、同性間の性行動に対する社会の態度から生じた観察者の偏見から、最近まで「公式には」大きな規模で観察されることがありませんでした。しかし、LGBTQ+への関心が世界中で広がりを見せている今日、動物に対してもその関心が向けられており、同性間の性行動は社会性鳥類および哺乳類、特に海洋哺乳類および霊長類において広く観察されていることをご存知ですか?。
同性間の性行動が刑務所内の性行動で見られる優劣関係に類似したオスの社会機構および社会的優位に起源があると考えている研究者もいますが、Joan Roughgarden、Bruce Bagemihl、Paul Vaseyのように、性の社会的機能は個体の優位とは必ずしも関係がなく、群れの中での連携および社会的結びつきを強化するのに役立っていると考える研究者もいます。さらに、機会があるにもかかわらずメスとつがいになるのを拒否し、電気的ショックで分かれさせようとしてもオスと生涯をともにするゲイのペンギンがいることを指摘して、社会機構理論に疑問を投げかける研究者もいます。このような同性のつがいに関する報告はまだ裏付けに乏しいものにすぎませんが、ヒツジのように単婚ではない種において恒常的なつがいの関係をもった恒常的な同性愛を確認する科学的研究も増加しています。
〜具体例〜
事例①
ニホンザルの場合、同性間の関係は、群れにより割合は異なるりますが、頻繁に見られます。メスは愛情のこもった社会的および性的な活動を特徴とする「求愛」を行います。関係の継続期間は数日から数週間まで様々ですが、このような絆がメスの4分の1にまで見られる群れもあるそうです。また、このようなペアから強くて長続きする友好関係が生まれることもしばしばであります。オスもまた典型的には同年齢の複数のパートナーとともに同性間の関係を持ち、このような関係はじゃれあいの多い愛情のこもった活動をともなうそうです。
事例②
キリンの場合、Bruce Bagemihlによると、交尾するつがいのうちの9割はオス同士であるということが述べられています。
事例③
アメリカバイソンは同性愛行動を一般的にしめすウシ亜科の哺乳類。オス同士の求愛、マウンティング、肛門への交尾器の挿入が記録されているそうです。また、メス同士のマウンティングはウシではよくみられることでさらに、間性のバイソンも存在するそうですよ。
事例④
バンドウイルカの多くはバイセクシュアル(両性愛)で、中には同性のイルカと長期的なパートナーシップを築く個体もいる。オスのイルカはどこにでもペニスを挿入するそうで、時にはパートナーの噴気孔の中にも。
〜まとめ〜
紹介としてベルン大学生態学・進化学研究所の生物学者、クリスチャン・クロプフ氏の言葉を借りたいと思います。同士は、「同性愛やクィアは少数派の変態的な現象で、不自然なことだと考える人は多い。だがそれは全くのナンセンスだ!。同性愛は約1500種で観察されており、社会性のある脊椎動物の恐らく全てに存在する。また同性愛関係の理由は必ずしも明らかではないが、社会的な絆を強め、集団の結束に貢献することが分かっている。逆に不自然なのは、”同性愛に対する嫌悪感や性に基づく差別”だ。動物界では、同性愛の個体が疎外されたり、不利になったりする例を1つも見たことがない。人間は自然を観察し、研究し、保護できる。人間という種をより理解するために、自然を理解しようと努めることもできる。ただ、自然をお手本にするのは間違っている。唯一分かっていることは、自然界には何でもあるということ。想像を超えた性行為や奇妙な性別役割分担、そして共食いから子殺しまで、あらゆるパターンが存在する。しかし自然界からのヒントだけでは、人間社会がどのように機能すべきかは決められない。人間は生物学的な存在であるだけでなく、文化的な存在でもあり、行動は全て文化によって定義付けられている。事の良し悪しを決めるのは、社会の中で生きる私たちの判断に委ねられている。」と。人々がより寛容に、よりオープンになれば――。そんな思いで同氏は2021年にベルン自然史博物館の「クィア展」を開催しています。「クィア展」は今年の3月に終了していますが、様々な方の活動を通してスイスでは改正婚姻法が2020年6月に可決され同性婚が合法化されました。
私たち日本では未だに同性婚に対する法改正はされておらず、またLGBTQ+への偏見・差別も根強く残っています。このように人間だけでなく自然界にも目を向けてみると性の多様性というのはごく自然で当たり前のことだと気付かされます。GEMPの記事を読んで少しでも多くの方にLGBTQ+の方々の理解へ繋がればと思います。
参考文献
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