見出し画像

AI見積もりサービスは革新的だけど、、、〜本当にそれでいいの?〜

最近、3Dデータをアップするだけですぐに加工の見積もりが出て、そのまま発注できるサービスが話題です。
設計者にとっては、図面を作る手間が省けてとても便利ですよね。AIの進化で、こうした仕組みが可能になったわけです。

でも、実際に加工をする「現場」はどうでしょうか?
AIが出した見積もりに、現場がちゃんと対応できているのか。リスペクトと適切な対価があるのか。
この記事では、便利さの裏側にある現場の課題について考えてみます。


AI見積もりサービスの登場とその便利さ

最近、3Dデータを入力するだけで、希望納期に合わせた見積もりが自動的に算出され、そのまま加工の発注までできるサービスが登場して話題になっています。
設計者としては、この手のサービスが登場したことに、かなりのメリットを感じている人も多いでしょう。
なぜなら、これまでのプロセスでは、部品を加工するための2D図面や部品図を展開して、それを製造業者に渡す必要がありました。
しかし、3Dデータだけで発注できるとなると、その手間がすべて省けるわけです。

たとえば、ある製造現場では、図面展開だけで数時間かかることも珍しくありません。それを一瞬で省略できるとしたら、どれほど効率的か。設計者にとって、これまでの作業が一気に短縮され、余計な時間を節約できるのです。
こうしたAI見積もりサービスは、短納期の案件にもスムーズに対応できることから、利用者にとっては「便利すぎる」といっても過言ではありません。

AI見積もりの仕組みと背景技術

では、どうしてこんなことが可能になったのか、ちょっと触れておきます。

背景には、AI技術(というより容量)の進化があります。
今までは、加工の見積もりには職人技や経験が必要とされ、手作業で行われる部分が多かった。
しかし、最近のAIは膨大なデータを処理することができるため、大量の3Dデータと価格を元にして、その形状や大きさ、材料をもとに「どう加工すれば良いか」を計算し、それに基づいて価格を見積もることができるようになったんです。

この技術の進化が、見積もりの迅速化を実現し、多くのユーザーにとって画期的なサービスを提供しています。
従来の人間の手を借りることなく、AIが自動的に材料のコストや加工時間を計算し、最適な価格を提示してくれるわけです。

さらに、このサービスを無料で提供し、設計者が手軽に利用できるプラットフォーム化したこと自体も革新的と言えます。
今までなら、見積もりに時間がかかり、価格の調整も手動で行わなければならなかったのに、今ではその時間や手間がすべて省略されるわけですから。

サービスの裏側に潜む問題点:加工現場の実情

しかし、ちょっと待ってください。

このAI見積もりサービス、表向きには非常に便利で画期的に見えるものの、加工を実際に行っている「現場」に目を向けてみると、話は少し違います。

見積もりをAIが自動で出してくれるのは確かにすごいことですが、その見積もりを受けて加工する現場では、いまだにNCプログラム(工作機械に指示を与えるプログラム)を手作業で作成していることが多いんです。
つまり、AIが出した見積もりに基づいて製造業者が機械を動かすためには、現場の人がNCプログラムを一つ一つ入力しなければなりません。

ここで問題になるのが、企業ごとに使っている工作機械が違うことです。
どの機械を使うか、どんなネットワーク環境で運用しているかもバラバラなので、AIが自動で見積もった価格をそのまま加工業者が実現するのはかなり難しいというのが現実です。
つまり、見積もりが「AI的に最適」であっても、それを実際に現場が実行できるかは別問題なんです。

原価割れリスクと現場の疲弊

さらに、AIが見積もりを出す際、どうやってその価格を決めているかというと、基本的にはAI内の「ベストプラクティス」に基づいています。
これが何を意味するかというと、理論上は最も効率的な加工方法をベースに価格が設定されているということです。

ただ、現場の加工業者はそれに合わせる形で作業できるわけではありません。
特に、NCプログラムを自動生成してくれるシステムがまだ普及していないため、手動でプログラムを作成して、実際に機械に入力して加工することがほとんどです。この手作業が、見積もりで出た価格に見合わない手間を生むことがあり、下手をすると「原価割れ」してしまうリスクがあります。

現場の疲弊が進む中で、AIの見積もりサービスが効率化を推し進めていることは事実ですが、その一方で現場の実情を無視したまま価格を押しつけられる形になってしまい、加工業者にとっては非常に厳しい状況が生まれているんです。

AI技術と現場のリスペクト:本当のイノベーションとは?

ここで問いたいのは、こうしたサービスが「ものをつくる現場」へのリスペクトを欠いていないかということです。
確かに、見積もりや発注のプロセスを劇的に簡略化することは、ユーザーにとって大きなメリットです。しかし、実際にその価格で現場が稼働できるか、無理を強いていないか、そうした配慮が必要です。

もし、本当にものづくり現場を尊重するのであれば、見積もり価格が現場の作業にしっかりと見合ったものになっているべきです。
また、技術的にも、見積もりを出すだけでなく、その価格に基づいてNCプログラムまで自動生成し、現場での手間を減らすような一貫したシステムの提供が望まれます。

これができれば、AI見積もりサービスは本当に「イノベーション」と呼べるものになるのではないかと思うのです。

これからの技術進化とビジネスモデルへの期待

現時点では、AI見積もりサービスは画期的である一方で、ものづくり現場に対しての配慮が欠けている側面があります。
ものをつくる現場がこれ以上疲弊しないためにも、技術の進化は急がれています。AIが見積もりを出すだけでなく、現場での作業負荷を軽減するようなトータルソリューションが必要です。

これからのものづくりに向けたビジネスモデルや技術がどう進化していくか、期待とともに注目していきたいところです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?