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驚異的ヒット『劇場版「鬼滅の刃」』の未来 ~ホームエンタ市場のポテンシャルを探る~


『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(10月16日[金]公開)が驚異的なヒットスタートを切りました。初週土日2日間の興収は33億5400万円、動員は251万人を記録。これは歴代1位の動員・興収記録の約2倍にも達します。社会現象ともいえる記録更新の勢いに乗り、本作は今後も劇場興収において多くの記録を塗り替えることが予想されます。

そしてこの快進撃が続けば、本作のDVD・BD(レンタル、セル)や動画配信(SVOD、TVOD、EST)といったホームエンタテイメント市場での記録にも期待が高まります。そこで、この度新たにリリースしました「BIRDS 市場概況」「BIRDS 作品別詳細」のデータを用いて、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のホームエンタテイメント市場におけるポテンシャルを分析しました。

「BIRDS 市場概況」「BIRDS 作品別詳細」とは
ホームエンタテイメント市場でリリース(発売・配信)される主要な映画・ドラマ作品の浸透状況や購入意欲を掲載。DVD・BDのセル意欲、レンタル意欲はもちろん、デジタル(SVOD、TVOD、EST)の各意欲まで個別に聴取し、劇場公開直後とHEリリース時期の2箇所の指標推移を閲覧できるオンラインダッシュボードです。「BIRDS 市場概況」がホームエンタテイメント市場を俯瞰して把握するのに適している一方で、「BIRDS 作品別詳細」は、作品単位での深堀りを得意としています。

<ウインドウ別鑑賞意欲比較>

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全指標で平均値を大きく上回るポテンシャルの高さ

上記グラフは、『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』の公開週末(2020年10月17日~18日)に実査した、ホームエンタテイメント市場におけるウインドウ別の意欲率です。横棒は邦画アニメ作品の平均値※を示しており、どの指標も平均値以上を記録。本作のホームエンタテイメント市場におけるポテンシャルの高さが伺えます。
※2013年12月以降に100スクリーン以上で劇場公開された邦画アニメの平均値

調査データによると、5指標中、最も高い意欲を示したのは、2.7%を記録したDVD・BDレンタル意欲でした。一方、平均値に対して最も差をつけたのが、SVOD意欲となりました。大ヒットスタートを切り、公開週の劇場鑑賞意欲は9.2%と高い値を誇る本作。では、その高い劇場鑑賞意欲のポテンシャルを最大限に発揮できるのはどのウインドウなのでしょうか。劇場鑑賞意欲と各指標のバランス分析から探ってみます。

<ウインドウ・バランス分析>

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劇場動員に比例した高いポテンシャルを持つDVD・BDセル

上記は、劇場鑑賞意欲と各指標をかけあわせた分布図で、ウインドウのポテンシャル把握に利用できます。分析には、2018年以降に100スクリーン以上で劇場公開された邦画アニメ作品を利用しました。なお、各指標は劇場公開週から4週目までの各週と8週目に聴取した値の平均値となります。ただし、『劇場版「鬼滅の刃」』の値(オレンジ)は、現在の最新値である劇場公開週のみの値となることにご注意ください。

まず、「劇場鑑賞意欲×フィジカル購入意欲(DVD・BDセル意欲)」(左図)をご覧ください。オレンジで記された『鬼滅の刃』の位置は他作品に比べかなり右よりであることから、本作の劇場鑑賞意欲が格段に高いことがみてとれます。また、傾向線上にあることから、劇場鑑賞意欲に対して申し分のないセル意欲を持ち、セルでの大ヒットも十分に見込めます。

一方で、「劇場鑑賞意欲×フィジカルレンタル意欲(DVD・BDレンタル)」(右図)は、傾向線に対して下振れしていることが分かります。ウインドウ別意欲率では他指標に比べ高い意欲率を記録していましたが、他作品と比べた際、本作の高い劇場鑑賞意欲に対するポテンシャルとしては低めの結果となり、劇場のヒットに比べると厳しい状況が予想されます。

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2ndウィンドウとして高いポテンシャルを誇るTVOD

続いて、動画配信の従量制課金ウインドウに目を向けてみます。「劇場鑑賞意欲×EST意欲」(左図)は、フィジカル購入(DVD・BDセル)同様に傾向線上にあり、本作の高い劇場鑑賞意欲のポテンシャルを十分発揮できるウインドウであると予想されます。

そして、さらにその上を行くポテンシャルを持つのが、TVODです。「劇場鑑賞意欲×TVOD意欲」(右図)をみると、オレンジで記された『鬼滅の刃』が、他の分布図に比べて傾向線からもかなり上振れていることが分かります。デジタル版のレンタルといえるTVOD。下振れていたフィジカルレンタル(DVD・BDレンタル)とは対象的に、TVODは好調に売上を伸ばすことが予想されます。

上記4指標は、作品単位で金額を支払うウインドウとなりますが、一定額で作品が見放題となるSVODのポテンシャルにも目を向けてみましょう。通常SVODは従量制であるEST、TVOD配信後のウインドウとなるため、 定額制×従量制でのバランス分析を行いました。

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TVOD、ESTを超えて広がるSVODの可能性

上記分布図から分かるように、傾向線より上に位置していたEST、TVODよりも、SVODはさらに上振れています。劇場での大ヒットに続き、2ndウインドウとなるフィジカル購入(DVD・BDセル)、EST、TVODでもしっかり稼ぎながら、さらにその次のウインドウともいえるSVODでも高いポテンシャルを誇り、末永い作品の広がりが期待できる『劇場版「鬼滅の刃」』。本作の快進撃は当分やみそうにありません。

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