3Dゲルプリンター
3DCADなどで作成したデータを出力する3Dプリンター。
材料はABS樹脂やポリ乳酸、光硬化性樹脂が主流です。
いずれもソリッドな材料ですが、ソフトな材料を出力する3Dプリンターもあります。
弾力の有るゴム、そして柔らかくウェットなゲルです。
ゲルを3Dプリンターで出力できると、どんなメリットがあるのでしょうか?
①専門知識や特殊な技術なしに、好きな形や色のゲルを作ることが出来る。
第一はこれですね。
ゼラチンのように簡単に溶かしてゲル化することの出来るものもありますが、思うような形や色、強度にするのは簡単ではありません。
複雑な形ならなおさらです。
原料と3Dのデータを準備するだけで作ることが出来れば、多くの人が様々なゲルを好きな形にして活用することが出来ます。
専門家も同様で、ゲルの作製や加工に費やしていた労力・時間を削減出来ます。
②食のバリエーションが広がる
3Dプリンターによって、流動性・粘性のある材料を様々な形や色に出来るため、上手く味付けすれば色んな料理に応用できます。
例えば、介護食。
見た目も食感も貧しい流動食でも、ゲルプリンターで寿司やステーキの形と色にして味付けすれば、食事は楽しいものになると思います。
7年前に学会で山形大学の発表を聞いたときは驚き、とても感心しました。
昨年の発表では、より複雑な形を出力できるようになっていました。
3Dプリンターで出力した鯉型ゼリー(「未来の食事を3Dプリンターでつくる -食品3DプリンタE-CHEF活用で、見た目も美しいゼリー食品の開発へ-」山形大学 宮助教, 古川教授ほか より引用)
ちなみに、3Dフードプリンター自体は、砂糖やパン生地などを出力するタイプが既にあります。
③医療分野への応用
手術の練習などに使う臓器モデル作製への応用が始まっています。
動物を使った練習は費用がかかる上、頻繁に出来ません。
しかし、3Dプリンターで精巧に作ったものであれば毎日練習できるため、技術や知識を短期間で向上させることが出来ると考えられています。
本物と同じ見た目と感覚で練習できるのは素晴らしいですね。
3Dプリンタで作った臓器モデルの実物を見たことがあるのですが、その精巧さに驚かされました。
臓器以外の部分も本物そっくりに作ることが出来れば、手術の練習だけでなく、新しい手術方法や医療機器の開発にも応用出来るのではないでしょうか?
他に、ゲルの眼内レンズや人工血管の作製などが試みられています。
3Dゲルプリンターで作製した人工の指(https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/education/poster/y2016/engineering/)
◆3Dゲルプリンターの仕組み
3Dゲルプリンターには二つのタイプがあります。
A 流動性のある材料をノズルから押し出して積み上げるタイプ
B 液体にUVを照射してゲル化させるバスタブタイプ
Aは従来からある、樹脂をノズルから押し出して積層するタイプと同じです。
フードプリンター(https://3dnews.3day-printer.com/archives/111)
写真はゲルプリンターではありませんが、このようにノズルから原料を押し出して少しづつ積層し、造形します。
Bは下図のように、バスタブに必要な原料を溶かした水溶液にUV光を照射し、造形します。従来の光造形タイプに近いですね。
山形大学の新技術説明会資料「3Dゲルプリンター:ソフト&ウェットマテリアルのオーダーメード立体造形法の開発」より引用
世界初の3Dゲルプリンター(https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/education/poster/y2016/engineering/)
写真の装置の内部に、水溶液を入れるバスタブがあります。
柔らかくてウェットなゲルの加工は難易度が高く、型を利用する場合も複雑な形は困難です。
でも、3Dゲルプリンターであれば、どんな形のゲルも容易に作ることが出来るようになります。
今後が楽しみな技術です。