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がん放射線治療にポリビニルアルコールを応用

東京工業大学のグループが、ポリビニルアルコール(スライム作りの洗濯のりでお馴染みです)を使って放射線がん治療の効果を高める手法を開発したと発表しました。
発表されている記事は誤解を与えるものが多く、報道の問題点も踏まえて解説します。

「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」というがん治療法に応用したとあります。

日経新聞の記事によると
「BNCTはまず患者にホウ素化合物を含んだ薬剤を投与し、がん細胞に取り込ませる。次にがん細胞に向けて中性子線を当てるとホウ素化合物と反応してアルファ線などが発生し、がん細胞を殺す。正常な細胞を傷つけないなどの利点がある。」
ところが、時間がたつと肝心のホウ素化合物が減少してしまいます。ホウ素化合物の減少を抑えることが出来れば、治療の効果を上げる事が期待できます。

そこで、ポリビニルアルコールをホウ素化合物と混合した薬剤を作ったところ、6時間経過してもホウ素化合物はほとんど減少しなかったそうです。

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詳しい原理までは分かりませんでしたが、ポリビニルアルコールの水酸基(OH)がホウ素化合物を捕捉しているのではないかと考えられます。

多くの記事は液体のりを使ったことを強調し、中には液体のりで有名なアラビックヤマトの写真をのせています。
確かに、ポリビニルアルコールと液体のりの原料は同じですが、この研究は液体のりを使ったわけではありません。
ポリビニルアルコールはけん化度や重合度で性質が大きく変化するので、同じものと誤解を与えるような報道はすべきではないと思います。

実際、アラビックヤマトを販売しているヤマト株式会社は報道を受けて、「本来の目的とは違う誤った利用はやめて下さい」と注意喚起しています。
昨年もポリビニルアルコールを使った研究成果でアラビックヤマトが取り上げられました。
インパクトの大きさではなく、正しく客観的な報道を心掛けて欲しいですね。

ちなみに、アラビックヤマトも洗濯のりと同様にホウ砂でスライムを作ることが出来ます。原料も含めて、以下の記事で詳しく解説しています。


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