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ポリエステルとアクリル

ポリエステルはエステル結合を持った高分子化合物の総称です。
ポリは「たくさん」という意味なので、エステルがたくさん繋がったものだということが名前から分かります。
エステルは、一般的にカルボン酸とアルコールを反応させて作る化合物です。
では、ポリエステルはどうやって作るのかというと、カルボン酸を2つ持つジカルボン酸とアルコールを2つ持ったジオール脱水縮合によって作ります。
*3つ以上もつ物質でも作ることができます。

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代表的なのはポリエチレンテレフタラート(通称 PET)ですね。
PETは、テレフタル酸というジカルボン酸と、エチレングリコールというジオールから作ります。

PETボトルでお馴染みですが、繊維にも使われています。
PETボトルをポリエステル繊維にリサイクルすることもありますね。
ポリエステルの繊維は丈夫で切れ難く、吸湿性が低いために乾燥させやすいという特徴を持っています。
しわになりにくく、手入れがし易いのですが、静電気を発生し易く、汚れが落ち難いという欠点もあります。
そのため、綿などと混紡して使われることが多いですね。

ちなみに、洗濯ネットやスポンジとして使われることが多いです。

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これは表面の不織布層がポリエステル繊維です。
真ん中の層はポリウレタンで、スポンジに弾力を持たせています。
そして、こちらは洗濯ネット。

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丈夫で乾燥させやすいので、洗濯ネットに適しているんです。

続いて、アクリル
一般的に、アクリルとはアクリル樹脂のことを指します。
アクリル樹脂は、アクリル酸エステル、もしくはメタクリル酸エステルの重合体です。
アクリル酸エステルは、その名の通りアクリル酸とアルコールのエステルです。
メタクリル酸エステルはメタクリル酸とアルコールのエステルですね。
よく使われるのは、ポリメタクリル酸メチルの樹脂です。
ポリメタクリル酸メチルは、PMMAという略称で呼ばれます
(Polymethyl methacrylate → PMMA)

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アクリル樹脂の特徴は、透明度の高さです。
アクリルガラスと呼ばれるくらいです。
ガラスとアクリル板は、遠目からでは違いが分かりません。
曲げる、磨く、穴を開けるなど、加工がし易いのもアクリル板の特徴です。そのため、様々なものに使われてます。アクリルスタンドや仕切りなど、日常生活でも見ることの多い樹脂です。

アクリル板

また、水族館ではガラスではなく、アクリル板が使われています。
割れにくく透明度が高い上、曲面などに加工し易いため、ガラスの代わりに使われています。
耐久性も高く、透明度や強度がほとんど低下しないのも、水族館で採用されている理由の一つでしょうね。

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他には、アクリル絵の具ですね。
これは、アクリル酸エステルの重合体を水に分散させたエマルションです。
このエマルションは接着剤としても使われています。

さらに、光硬化性樹脂
UVライトや日光を当てることで固まる樹脂も、アクリル系の高分子です。
ホビー関係でよく見かけますね。

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このように、樹脂をシリコーンの型に流し込み、UVライトを照射します。
製品によって硬化時間や硬さは異なりますが、数分程度で硬化するものが殆どですね。
作業するときは、室内の日光のあたらない場所で行います
少しでも紫外光があると、硬化が始まってしまいます。
*気泡が入ったときは爪楊枝で取り除きます。

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UVライトを照射すると、綺麗に固まります(ライトを直視しないで下さい)。
固まるときに発熱して熱くなるので、すぐに触らず、30分ほどそのままにして下さい。

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光硬化性樹脂は、UVレジンとも呼ばれます。
*レジン(resin)は英語で樹脂を意味します。
ジェルネイルや、光造形タイプの3Dプリンターで使われる樹脂にも、アクリル系の硬化樹脂が使われています。

そして、吸水ポリマーとして知られるポリアクリル酸ナトリウム
これもアクリル系の樹脂ですね。
アクリル樹脂としてよく使われるポリメタクリル酸メチルによく似た構造をしています。

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ポリアクリル酸ナトリウムにはメチル基がありません。
そして、カルボン酸(COOH)を持っています。
これだけで大きく性質が変わります。
カルボン酸を持っているために水中でCOO-とH+に解離し、静電反発を起こします。
ポリアクリル酸ナトリウムなので、厳密には、H+ではなく、Na+ですね。
このナトリウムイオン濃度によって発生する浸透圧が高い吸水性の源になっています。

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ちなみに、ポリマーは高分子のことです
たまに高分子ポリマーというおかしな表現をみかけますが、これは間違いです。高分子高分子と言っているのと同じです。
使うなら、高分子かポリマーのどちらかですね。
そして、樹脂というのは樹木から取れる樹液が固まった物質のことです。
漆や松脂がそうですね。
植物などから取れる樹脂は天然樹脂、アクリル樹脂のように人工的に作ったものは合成樹脂と呼ばれます
合成樹脂は、外観や性質が天然の樹脂と似ている高分子化合物です。
吸水ポリマーは高吸水性樹脂とも呼ばれますが、これは乾燥した状態が樹脂状だからです。
吸水して膨らんだ状態だと、樹脂には見えませんねw

最後に、アクリル繊維について。
実は、アクリル繊維はアクリル樹脂とは異なる物質でできています。
ポリアクリロニトリルの繊維なんです(アクリル系高分子の一種です)。
紛らわしいですねw

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水だけで汚れを落とせるスポンジによく使われています。
スポンジを買う時に成分表示を確かめてみて下さい。
と言っても、アクリル繊維としか表記されていないことが多いですね。

以下のUVレジンとライトを使用しました。


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