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ヒアルロン酸の特徴とゲル
ヒアルロン酸は人の身体に欠かせない高分子です。
分子の枝分かれの無い、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)と呼ばれる多糖類の一種です。
グリコサミノグリカンは動物のあらゆる組織に存在します。
今回ご紹介するヒアルロン酸は、人の関節や眼のガラス体、皮膚などに存在します。
特に、関節の潤滑剤として重要な役割を果たしています。
ヒアルロン酸は1934年、ウシの眼の硝子体から発見されます。
発見後、人の皮膚や関節液、ニワトリのトサカ等からも分離され、多くの動物が持っている物質ということが明らかになります。
1950年には、ヒアルロン酸の化学構造も解明されます。
上図のように、D-グルクロン酸 とN-アセチルグルコサミンの2つの糖が繰り返し繋がった構造をしています。
直鎖状の高分子で、分岐の無いシンプルな構造をしています。
分子量は80万~100万と高いため、低い濃度でも溶かし難いです。
カルボキシル基(COOH)を多量に持つため、負の電荷を持つ高分子=ポリアニオンとしても知られています。
このため、ヒアルロン酸とアニオンを掛け合わせた「ヒアルロナン」という名で呼ばれます。
*日本ではヒアルロン酸と呼ばれるのが主流です。
ヒアルロン酸は高い保水性と粘性を持っています。
2%の低濃度でもゲルに近い性質を示します。
一般的に市販されているのはヒアルロン酸の水溶液ですが、
写真のように粉末タイプもあります。
ただし、販売されているのはごく少量です。
熱湯にヒアルロン酸ナトリウムの粉末を加えて溶かせば、水溶液が出来ます。
写真は1%の水溶液ですが、溶かすのに時間がかかります(1~2時間混ぜ続ける必要があります)。
1%だと流動性があり、扱いやすいです。
2%になると、粘性が高くなり、ゲルに近い状態になります。
溶液の入ったビーカーを傾けても、なかなか流れ落ちてきません。
水飴のような水溶液です。
粘りがあります。
水溶液を攪拌していると、中央の部分が盛り上がります。
この現象を、ワイゼンベルグ効果と呼びます。
料理でクリームなどを混ぜるときに見たことがありませんか?
ヘラや棒などにクリームやソース、ケチャップなどが巻き付き、上昇してくるのがワイゼンベルグ効果なんです。
粘弾性体にみられる性質です。
大雑把に言えば、ある程度高い粘性をもつ流体にみられます。
水溶液の濃度が3%になると、流動性はほぼなくなり、ゲルのような状態になります。
それ以前に、溶かすのは困難です。
ちなみに、ホウ砂水溶液を加えても洗濯糊のようにゲル化しません。
4%のホウ砂水溶液を少しずつ加えて混ぜても、わずかに粘性が高くなる程度で、入れすぎるとヒアルロン酸水溶液の濃度が下がり、かえって粘性が下がります。
人工イクラのように、乳酸カルシウム水溶液を使っても効果はほとんどありません。
金属イオンによる橋架けが無い訳ではありません。
しかし、効果は限定的です。
アルコールを加えるとさすがにゲル化します。
アルコールには溶けないため、ヒアルロン酸が凝集して塊のようになるんです。
ただ、これは他の多くの水溶性高分子にも同じことが言えます。
特に珍しいことではありませんw
ヒアルロン酸は、工業的にはニワトリのトサカから分離することで作られています。
冒頭でご紹介したように、ヒアルロン酸は人体の様々な組織に存在します。皮膚に潤いを与え、関節では潤滑剤(骨と骨の間の滑りをよくする)やクッション剤としての役割を果たしています。
各組織の状態維持など、その役割は多岐にわたります。
ヒアルロン酸の用途は化粧品だけでなく、関節への注入や眼科手術の補助剤として使われています。近年では、皮膚への注入も行われています。
ヒアルロン酸は加齢によって減少し、そのため肌の張りがなくなり、乾燥し易くなります。
ただ、皮膚への注入で改善するのは一時的なものなので、現時点では、過度な期待は禁物です。
今回ご紹介したように、粉末でも販売されていますが、正直に水溶液を買った方が良いですね。手間を考えると、わざわざ溶かして作るメリットはないですw
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