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スライムとゲルの構造

スライムとは?
この答えは人によって様々だと思います。
ドラゴンクエストに出てくるぷよぷよしたスライム。
マインクラフトの音を立てて跳ねるスライム。
洗濯糊とホウ砂で作るスライム。
ドロドロしたエイリアン(?)

実は、一般的な定義があります。
泥や粘液、ドロドロしたもの、ネバネバするもの
こういうものを指してスライムと呼びます。
スライムの定義は結構広いんです。

日本でスライムと言ったら、
ドラゴンクエストのスライムと、洗濯糊とホウ砂で作るスライムを思い浮かべる方が多いようですね。

洗濯糊で作るお馴染みのスライムでも、作り方によって全く違う状態のスライムになります

ホウ砂を加える量を変えると、どうなるか実験してみます。

作り方は以下の通りです。
① 3~4%のホウ砂水溶液を作る
 →ホウ砂1gを25mlのお湯(40~50℃くらい)に入れてかき混ぜて作ります。
  やや溶け難いため、1gを30mlのお湯に溶かした方が作り易いです。
  ホウ砂の濃度は下がりますが、問題なくスライムを作ることが出来ます。

洗濯糊を20ml、水を30mlプラカップなどに取り、
  均一になるまで混ぜる(洗濯糊 : 水=2 : 3)。
 *色を付けるときはこのタイミングで入れます。

ホウ砂水溶液を②の水溶液に少しずつ加えながら混ぜ、ゲル化させる。

ゲル化したら、そのまま2~3時間ほど静置するのがベストです。
 さらにゲル化が進みます。
 もちろん、ゲル化直後に触って遊んでもOKです。

今回はホウ砂1gを30mlのお湯に溶かした、約3.2%のホウ砂水溶液でスライムを作ってみました。コニカルビーカーを使うと、手で振り混ぜるだけで溶かすことができます。
*30ml以上使うため、2倍の60mlで作りました。

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ホウ砂を加える量は、5ml, 10ml, 20mlの3パターンです。
色を付けると絵の具などに含まれる物質がゲル化を阻害することがあるため、着色はしませんでした。
代わりに、カップにアルファベットで印をつけました。

混ぜながらホウ砂水溶液を加えます。
すぐにゲル化しますが、慌てず20~30秒程度混ぜます。

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そしてもう一つ、水を加えない、洗濯糊だけのスライムを作ってみます。
ホウ砂水溶液は5ml加えました。
やはり水で薄めていないと硬めのゲルになりますね
混ぜるときに強い抵抗を感じます。

さらに、良く伸びるバルーンスライムのりも使ってみます。
こちらは水と混ぜた後、ホウ砂水溶液を5ml加えました。
普通の洗濯糊と違い、白く濁っていますね。
ゲル化するとより白っぽくなります。

そして、5つのサンプルをそのまま2時間置きます。
ゲル化を進めることと、気泡を抜く狙いがあります。
作った量やスライムの柔らかさにもよりますが、
気泡は一晩寝かせた方が綺麗に抜けます。

それでは、各サンプルの違いを見てみます。
Aのスライムはネバネバしていて、あまり伸びません

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ゆっくり引っ張ると少し伸びます。
遊ぶには物足りないゲルですね...

BのスライムはAより手につきにくく、よく伸びます

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このくらいだと触っていて楽しいですね。
まとまりやすく、遊びやすいです。

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ずっと触っていたくなります。

CのスライムはBと同じくらいの伸び方です
ただ、Bよりもまとまり難く、ベタベタします

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扱いにくいので、あまり遊ぶのに向かないですね。

一方、洗濯糊だけで作ったスライムは、ベタベタする硬いゴムのような感じになりました。

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加えたホウ砂の量はAと同じですが、全然違いますね。
全く伸びません。
触ってもあまり楽しくないですねw

そして、バルーンスライムはとても良く伸びます
面白いくらい伸びるので、遊びごたえがあります。

バルーン1_R

バルーン2_R

素早く引っ張っても切れずに伸びます
しかも、まとまり易いです。加えたホウ砂の量は、Aと洗濯糊のみのスライムと同じです。
これだけ違いが出ると考察のしがいがありますね。

まず、A~Cのスライムについて考えます。
ゲルは、高分子の網目の中に水などの溶媒を含んだソフトでウェットな材料です。

スケッチ-198

スライムは洗濯のりに含まれるポリビニルアルコールという高分子で出来たゲルです。
ポリビニルアルコールの分子鎖を、ホウ酸イオンが橋架けすることで網目構造が出来ます。

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これがスライムのゲル化の仕組みです。

ホウ砂の量が違うと、橋架けの数も変わります。
架橋剤(ここではホウ砂)の濃度が低ければ、分子鎖と架橋剤分子が出会う確率も低くなりますよね。

Aのスライム橋架けの数が不足していたため、橋架けされていないポリビニルアルコールの分子鎖が多数存在し、伸ばそうとしてもすぐに切れたと考えられます。

スケッチ-1

Bのスライム(ホウ砂水溶液10ml)は、ホウ砂がAの倍の量だったため、ポリビニルアルコールの分子鎖がしっかり橋掛けされ、良く伸びるゲルになったと考えられます。

一方、Cのスライム(ホウ砂水溶液20ml)はさらに橋架け部分が増えましたが、加えたホウ砂水溶液の量が多く、その水の影響を大きく受けてしまいました。

スケッチ-2

ポリビニルアルコール水溶液の濃度が薄くなり、分子鎖の間隔が大きくなってしまったと考えられます。
そのため、Bより粘着性が高くてまとまり難いゲルになったと推測されます。

では、水を加えない、洗濯糊のみのスライムはどうでしょうか?
ポリビニルアルコール水溶液の濃度が高いため、分子鎖が密になっています。
この状態で橋架けすると、図のようになってしまうんです。

スケッチ-3

分子鎖同士の絡み合いやホウ酸イオンの橋架けによって構造が強く固定されてしまい、分子鎖は動けなくなります
そのため、ゴムのような硬いゲルになり、全く伸びなかったんですね。

バルーンスライムの方は、分子鎖の長いポリビニルアルコールを使用している可能性が高いです。
分子鎖が長いと、図のような網目構造になります。

スケッチ-4

分子鎖の伸びる余地が大きく、ゲルがよく伸びる原因になっています。
白く濁っていたので、下図のように局所的な塊が出来、そこが大きな架橋点となっている可能性も考えられますね。

スケッチ-223 (2)

ちなみに、スライムを乾燥させた後、もう一度水に漬けても元には戻りません。

スケッチ-207

乾燥するとポリビニルアルコールの分子鎖が凝集し、密に絡み合います。
そうなると、吸水しても元の構造に戻れないんです。
伸びない、硬いゲルになります。


このように、網目構造を精密に制御できれば、様々な状態のゲルを自在につくることが可能になります。
網目構造がゲルの性質を大きく左右しているんですね。

ドラクエやマインクラフトのスライムは弾力がありますよね。
ある意味、一般的なスライムの定義を超えた存在と言えます。

弾む1

柔らかくて弾力を持つゲルは意外と作るのが難しいです。
加えられた力に大きく反発することのできる材料でなければ、弾力を持つことは出来ません。
柔らかくて弾力のある材料の代表は、天然ゴムですね。
ゴム材料は弾力に富んだものが多いですが、溶媒を含んだゲルには多くありません。
水などの溶媒を含むため、ゴムとは状態や作り方が異なります。
使用される高分子の違いもあります。
この辺りは別の記事で詳しく解説します。


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