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歴史と科学 Vol.8 ~繊維と産業革命②~

前回は古代から産業革命までを解説しました。
今回は、産業革命以降の繊維の歴史を見ていきます。

産業革命で変わる世界

産業革命によって織物は大量生産されるようになりました。
工場制機械工業は世界中に広まり、人々の生活も大きく変化します。
自宅から工場に働きに行き、仕事が終わると帰宅するという光景が定着します。
最初は労働時間の制約がありませんでしたが、次第に時間や安全に対する規約を定める企業が出てきます。
そして、従業員の権利を尊重し、働きやすさに力を入れた企業が伸びていきました

蒸気機関の登場は人と物の輸送を大きく変え、産業構造が変化しました。また、各地で都市化が進みます。特に大規模な改造を行ったパリは、多くの都市のモデルとなりました。

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クロード・モネ作『サン=ラザール駅、列車の到着』(Wikipedia)

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クロード・モネ作『花咲く堤、アルジャントゥイユ』:遠くの煙を出す工場と手前の自然の対比が描かれている
(ポーラ美術館:https://www.polamuseum.or.jp/collection/006-0467/)

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カミーユ・ピサロ作『テアトル・フランセ広場とオペラ大通り、陽光、冬の朝』(Wikipedia)

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カミーユ・ピサロ作『夜のモンマルトル大通り』(Wikipedia)

19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した画家は、蒸気機関車や工場のある風景など、産業革命によって変わる風景を描いています。

産業革命で織物の生産速度・効率は大幅にアップしましたが、繊維そのものが変わったわけではありません
しかし、20世紀に入ると産業革命は新たな段階に移り、繊維産業は大きく変化します。
繊維織物による軽工業を中心に起きた産業革命でしたが、今度は鉄鋼・機械・化学などの重化学工業が登場・発達します。

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