見出し画像

温室効果ガスの種類と発生源 ~カーボンニュートラルを実現するための課題とは?~

(前半無料)
温室効果ガスで有名なのは二酸化炭素ですね。
では、二酸化炭素以外はどうでしょうか?
以下のグラフを見て下さい。

画像1
南房総市HP(https://www.city.minamiboso.chiba.jp/0000000779.html)

温室効果ガスについて、よく引き合いに出されるグラフの一つです。
こうしてみると圧倒的に二酸化炭素が多いですね。
このグラフは人為起源ですが、畜産による二酸化炭素とメタンガス発生を人為的と捉えるかどうかは意見の分かれるところです。

そして、もう一つ考えたいのが、各ガスの地球温暖化係数です。

かながわ気候変動WEB(https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/0323/climate_change/contents3/page1-2.html)

二酸化炭素を基準にしてほかの温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力があるかを表した数字のことです。例えば、冷蔵庫やエアコンの冷媒として使われているハイドロフルオロカーボンは、種類によっては二酸化炭素の14,800倍の温室効果があります。

かながわ気候変動WEB(https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/0323/climate_change/contents3/page1-2.html)

メタンや一酸化二窒素は、人為的な排出量こそ少ないものの、二酸化炭素と比べて桁違いの地球温暖化係数です。

しかし、地球温暖化に最も大きな影響を与えているのは二酸化炭素です。
以下のグラフを見て下さい。

大気中の温室効果ガスの推移(Wikipedia)

左上のグラフが示す、二酸化炭素の大気中濃度が突出して大きく、加速度的に上昇しています。
一見、メタンと一酸化二窒素も同じくらい上昇しているようにみえますが、単位が違います。メタンと一酸化二窒素はppbなのに対し、二酸化炭素はその1,000倍のppmです

二酸化炭素は石炭を用いた火力発電自動車の排気ガス工場の排気など、化石燃料の燃焼がもっとも多く、焼畑農業も原因の一つとなっています。

日本で最も二酸化炭素を排出しているのは石炭火力発電所です。
とういうより、他の先進国も似たようなものです。
以前よりクリーンになったものの、火力発電の排出量が最も多いことに変わりはありません。
原子力発電所の再稼働が増えてきましたが、だからと言って火力発電をすぐになくすことは出来ません。
どの国にとっても、エネルギーを安価に安定供給することは何よりも大切なことだからです。
一時の感情論や思いだけでなくそうとするのは危険なことです。

ちなみに、排出量は少ないものの、地球温暖化係数の高い亜酸化窒素や一酸化二窒素も温暖化に影響しています。

海洋や自然土壌からの自然起源が約60%、農場での窒素肥料や家畜からの堆肥製造、バイオマス燃焼、化石燃料などの人間活動から約40%が排出される

Wikipedia

化石燃料からも出ていることが分かります。
そう簡単に変えられませんが、化石燃料や、石油由来の材料使用を削減することが必要だと考えられます。

難しいのが、日本は石油化学の強い国で、産業の中心の一つを担っています(日本に限った話ではありませんが…)。
もちろん、石油化学工業を維持するにはそれなりに大きなエネルギーが必要です。
二酸化炭素削減を目指すにあたり、どういう過程を経て低炭素社会を目指すのか、グランドプランなしに進めることはできません

石油化学工業は、石油や天然ガスを出発原料としてさまざまな生産工程を経て、合成樹脂、合成繊維原料、合成ゴムなど多種多様な化学製品を製造する産業です。

石油化学工業に使用する原料は、その国の資源事情などによって異りますが、わが国やヨーロッパでは原油を精製して得られる石油製品のうち「ナフサ」(粗製ガソリン)を主原料としています。これに対し、アメリカ、カナダ、中東産油国では天然ガスや原油採取時の随伴ガスに含まれているエタンを主原料として使用しています。さらにアメリカを中心にした頁岩層に含まれる天然ガス(シェールガス)を利用した安価な原料や、中国の石炭化学による石油化学製品の生産が拡大しつつあります。

石油化学製品は、日常生活のあらゆる分野に使われ、国民生活の向上に大いに貢献しています。とりわけ今日、わが国の産業が自動車、コ ンピュータ、電子・電気機器など高度組立産業を中心に世界的に高く評価されている背景にはすぐれた品質と機能をもった石油化学製品が重要な役割を果しています。

石油化学工業会HP : https://www.jpca.or.jp/trends/index.html

全体として炭素排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するためにどうするのか、国はもっと情報発信をした方が良いと思います(HPでは発信しています)。
マスコミも政府批判ばかりしていないで、意味のある情報を流し、一人ひとりが考え、行動できるように努めて欲しいですね。

*各企業は様々な取り組みを数十年前からしており、実際に日本の製造業の二酸化炭素排出量は2016年度で約10%減少しています1990年比, 環境省・温室効果ガス排出・吸収目録より)。

環境省のHPでは様々なプランがざっくりと示されていますが、肝心のエネルギーの安価かつ安定供給が抜けています。
そこが無いと、全て絵空事になってしまいます。
現状では、脱炭素社会は不可能に近いです。拙速に理想だけを追求するのはいかがなものかと思います。

ここから先は

1,278字 / 1画像
この記事のみ ¥ 200

読んでいただけるだけでも嬉しいです。もしご支援頂いた場合は、研究費に使わせて頂きます。