工業用水とは?
読んで字のごとく、工業用の水。
どんなことに使われ、上水とはどこが違うのでしょうか?
飲めない水だというのは、なんとなく分かると思います。
実際、浄水処理を行なっていません。
工業用水は地下水や川の水、湖沼の水、ダムの水などを沈殿処理したものです。
*工業用水道から供給されます。
沈殿処理とは、硫酸アルミニウムを水に加え、水中の微粒子を凝集させる処理です。
凝集してできた塊は重いため、水底に沈みます。
こうして水中の不純物を取り除きます。
硫酸アルミニウム(Wikipedia)
水中の微粒子はマイナスに帯電しているものが多いんです。
マイナスどうしの静電反発で水中に広がっています。
ここに硫酸アルミニウムを加えると、水酸化アルミニウムが生成します。
そして、アルミニウムイオン(Al3+)がマイナスに帯電した微粒子を中和します。
水酸化物が微粒子を吸着する効果も加わり、微粒子が凝集して大きくなります。
上水の場合は、この後も様々な工程があり、殺菌やフィルターろ過などが行われます。
工業用水は基本的に沈殿処理だけです。
取水から送水までの工程(京都府HP : https://www.pref.kyoto.jp/koei/kougyou_20.html)
ちなみに、硫酸アルミニウムは「硫酸ばんど(礬土)」とも呼ばれます。
工業用水の水処理では、「硫酸ばんど」と呼ばれることが多いようです。
また、水の凝集剤にはポリ塩化アルミニウム(PAC)や消石灰など、いくつかの種類があります。用途によって使われる凝集剤は変わります。
沈殿の一次処理だけなので、工業用水は上水よりも安価です。
そのため、工業的に大量使用するのに向いています。
用途は、工場の設備洗浄や冷却(水冷)、温度調整、ボイラー用水、原料などです。
そして、洗車や噴水、トイレ用水、散水、ビルの清掃などにも使われているんです。
水の科学博物館の噴水(神戸市, https://kwsc.jp/kwsm/)
工業用水で最も多いのは鉄鋼業での使用です。
冷却水で大量に使っているんですね。
次いで雑用水(洗車やトイレ用水、散水など)、
その次にパルプ・紙の製造、
さらに化学メーカーでの使用と続きます。
かつて、工業用水は大量の地下水で賄われていました。
しかし、過剰な地下水のくみ上げが原因で、地盤沈下が各地で起きました。
そのため、国や自治体が地下水を管理するようになります。
そうして整備されたのが工業用水道です。
原水となるのは、冒頭でご紹介したように、川の水やダム、湖沼の水などです。地下水や海水も使われています。
また、事業向けに限定した水道であるため、水道法の適用を受けません(Wikipedia)。
安価で使いやすいのが工業用水の特徴ですが、それでも貴重な水です。節水の工夫が各事業所で行われた結果、使用量は1973年をピークに減少し続けています。
さらに、工業用水の約80%が回収・再利用されています。
工業用水は噴水やトイレ、建物の冷却・清掃など、身近な事にも使われているんですね。
自分の身の回りで使われているところはないか、探してみると面白いと思います。