見出し画像

歴史と科学 Vol.2 ~錬金術と化学~

錬金術は英語でAlchemy(アルケミー)、
錬金術師はAlchemist(アルケミスト)、
このつづりを見れば、Chemistry(化学)とChemist(化学者)が錬金術から生まれたことが分ります。
現代化学の多くが、元を辿れば錬金術から派生したものと言えます。
また、錬金術は様々なファンタジーの源泉ともなりました。
錬金術を取り入れた作品が数多く存在することは、皆さんもよくご存じだと思います。

錬金術はその名の通り、金を錬成することを目的としたものです。
実際には、金以外のものも錬成が試みられました。
万能の薬や人体、中には命まで作ろうとした錬金術師もいました。

さすがに荒唐無稽に感じてしまいますね...。
実際、近世ヨーロッパ(15~19世紀頃)では、錬金術師は怪訝な目で見られることもしばしばだったようです。
しかし、科学の発達していなかった時代(主に古代~中世)、錬金術は科学そのものでした。そして、神秘的なものでもありました。
なぜなら、古代ではあらゆる技術は神から与えられたものと考えられていたケースが多かったからです。
錬金術に限らず、冶金(やきん)や木材・石材の加工も神聖なもので、加工する前に儀式を行うこともしばしばでした。
さらに、貴重な金や万能薬を作ろうとした錬金術は秘密裏に行われることが多かったようです。
そういうこともあり、錬金術は特殊な文字や記号で記録が行われました。ただでさえ魔術との関りが深かった錬金術は、より難解で怪しげなものとなります。

神に代わって人や命までも作ろうとした錬金術師。錬金術を極めることは、世界の真理を追究することでもあったんですね。
ただ、こういう行為は禁忌とされることもありました。錬金術が秘密裏に行われたのはこういう事情もあったようです。

錬金術から化学へ

錬金術の歴史は古く、古代エジプトや古代ギリシアの時代まで遡ります。

ここから先は

6,825字 / 9画像
この記事のみ ¥ 400

読んでいただけるだけでも嬉しいです。もしご支援頂いた場合は、研究費に使わせて頂きます。