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歴史と科学 Vol.4 ~日本独特の宗教が科学にもたらしたもの~

日本は和の国です。
弥生時代、魏の使者が訪れた時も、自分たちのことを「わ」と主張したのかもしれません。
魏志倭人伝に「倭」と記されたのは、当時の日本人がそう言ったからだと考えられます(あてられた倭という字は酷いですが...)。
大和(やまと)という名前にも表れていますね(地名、大和朝廷など)。
かの聖徳太子は十七条の憲法の第一条で「和を以て貴しとなす...」と記しています。現代語訳は以下のようになっています。

和を尊重し、争わないことを宗旨(主義)としなさい。人は皆、党派を作り、(物事の)熟達者は(常に)少ない。そのため君主や父親に従わなかったり、近隣と考えが相違したりもする。しかし、上の者も和やかに、下の者も睦まじく、物事を議論して内容を整えていけば、自然と物事の道理に適うようになり、何事も成し遂げられるようになる
*Wikipediaの訳を参照

実は、最後の第十七条でも似たようなことが書いてあります。
「物事を決めるときは独断ではなく、必ずみんなで議論しなさい。そうすれば最適な答えが得られます」
和とは書いていませんが、同じことですね。
憲法の最初と最後に「和を大事にし、みんなで話し合ば上手くいく」と書かれているわけです。
多くの日本人はこれを見て「その通りだ」と感じるのではないでしょうか。
しかし、冷静に考えてみると、十七条の憲法に書いてあることは誤っています。
「和を保っていればどんな物事も必ず上手くいく」とは限りませんよね。
「みんなで話し合えば最適解が得られる」とも言えません。
日本人が根回しをしたり、やたらと会議が多いのも和の思想、いえ、宗教から来ていると言えます。談合もしかりです。

さらに、和を保つために対立や競争を避けます。
日本人が競争や議論を嫌い、予定調和や話し合いですませようとするのはそのためだと考えられます。
行き過ぎると、徒競走でみんな一緒にゴールしよう、なんてことになります(^^;)

空気を読む、というのも和の思想から来ているのではないでしょうか?

「出る杭は打たれる」
みんなと違うことをする人、突出した実績や富を持つ人を良しとしません。
和を乱してしまうと、日本人は考えてしまうんです。
良い方向に出ると、みんなで協力して事にあたり、助け合います。
悪い方向に出ると、足の引っ張り合いをし、時には多人数で一人を攻撃します。
日本の同調圧力が強いのは、和の思想によるところが大きいんじゃないでしょうか?
自分には関係なくても、自分が我慢していることや出来ないことをやっている人を見つけるとSNSなどを使って叩きます。
週刊誌やテレビ番組はわざわざそういうターゲットを探して晒し物にします...

全てではないと思いますが、村八分や「いじめ」も和の思想の延長線上にあると考えられます。
みんなと違う人をのけ者にし、攻撃する......

こういう日本人の性質はとても残念です。
悪い事ばかり出てきましたが、どんなものもメリット・デメリットがあります。メリットの方を見ていきましょう。

良い面で挙げられるのは、おもてなしの心だと思います。
和を保つため、相手から悪く思われないために丁寧に接するようになったと考えられます。
サービス精神の高さは、和の思想から来ているんじゃないかと僕は思います。
製品の包装が丁寧だったり、中身が表示の内容量より少し多めに入っていたりしますよね。
個人的には、実験に使う試薬でそれを感じます。
日本の試薬メーカーの方が丁寧かつ気の利いた梱包がされていて、しかも中身は表示より多めに入っています(25gなのに26g入っているなど)。
逆に、海外メーカーのものは表示より少ないことが多々ありますw
水に触れると良くない試薬が湿気っていることも...
日本の試薬メーカーだと、水(湿気)厳禁のものは特に包装に気を使っています。
さすがに危険度の高いものは海外メーカーでも厳重ですね。

このように、製品やサービスを受け取る側になって行動する。
海外でもこういう人はいますが、日本人に特に多いと感じます。

また、日本人は他人を信用する人が多いです。
嘘をつかない、商品やサービスを値切らない。
もちろん、嘘をつく人も値切る人もいますが、そういう人が世界的に見てとても少ない国です。
これはやはり、人から恨まれないよう、相手に配慮し、和を保とうとするためでしょう。
良し悪しはともかく、日本人は騙されやすい人が多いですね (^^;)
最初から相手や組織を疑って見る人の少ない国だと思います。
逆に言えば、信用できる人が多い国ですね。

良い面、悪い面をしっかり把握しておけば、悪いところを治し、良いところを伸ばすことが出来るのではないでしょうか?
私たち日本人がどのような思想や宗教観を持っているか知ることは、とても重要なことだと思います。
よく日本人は無宗教といいますが、ここまで挙げてきたことだけを見ても、それは間違いだということが分ります。
そして、日本人の根底にあるものは和だけではありません。

言霊(ことだま)
古来より言葉には力があると日本人は考えてきました。
日本人は今も「言ったこと」を重視します。
例えば、危険予測などをすれば、実際に起きると
「あんなことを言うからこうなったんだ」と発言した人を責めます。
あるいは、試験の前に落ちる、滑るなどという事を禁句とする傾向があります。実際は合否に関係ないですよね。関係あるのは本人の実力のみです。
言霊に関連したことわざもありますね。
「嘘から出たまこと」
「噂をすれば影」
「口は禍の元」

他国でも、古代においては言葉の力が重視されていました。
しかし、日本における言霊は、他国とは考え方が大きく異なっているんです。
その違いを、日本文化・文学研究で有名なドナルド・キーン氏は鋭く指摘し、日本には独自の宗教が存在することを示唆しています(後述します)。
この考察は見事で、日本人では見抜けないものです。
*ドナルド・キーン氏は米国出身ですが、2011年に日本に帰化し、亡くなるまで日本人でした。

今回は、日本独特の宗教と、それが科学や文化にどう影響したのかを分析します。

1. 古今和歌集に見る、言霊信仰と科学への影響

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