- 運営しているクリエイター
#満洲国
大森三彦とその妹たち 拾遺 金原 甫
1
前稿において、肝腎なことを書いていなかった。
宮本百合子と中野重治は、日支事変(日中戦争)を受けて、内務省から事実上の執筆禁止(あるいはマスコミへの寄稿の不可能)措置を受ける。非常時における国内不穏分子の一人だということだろう。1938年1月からである。
それは1939年秋ごろまで続き、「文壇」復帰作第一作が宮本百合子にとってはこの『杉垣』だったのだった。これは青空文庫で(つまりネット
大森三彦とその妹たち(宮本百合子の周辺) 金原甫
0
以下の文章は単なる読み物であり、文芸評論などではない。
1
宮本百合子の『杉垣』という短編小説(戦後に『風知草』に収録)が、高杉一郎夫妻の戦時下の生活をモデルにしたものだということは、一部で知られている(『杉垣』初出は1939年11月号の『中央公論』、単行本に収録されたのは1947年文藝春秋新社)。
そこの仔細は、高杉一郎の『征きて還りし兵の記憶』(岩波書店・1996年)の宮本百合子について