8月某日 原稿合宿2024in城崎①
8月某日。私は夜行バスの車上でうとうとしては目を覚ます、ということを繰り返していた。創作者フォロワーとの原稿合宿にいよいよ向かうのだ。
参加者紹介
守宮泉
→私。小説を書いたり本を読んだりしている人。
高坂悠壱さん(以下、高坂さん)
→今回の合宿発案者。小説を書いたり全国のイベントに出没したりしている人。
定上栄さん(以下、栄さん)
→小説を書いたりTRPGシナリオを書いたりしている人。
来栖稚さん(以下、きさいさん)
→小説を書いたり絵を描いたりキャッチコピーを書いたりしている人。
1日目
電車で移動する
早朝の京都駅。目当ての電車が来るまで時間があったので、ホームのベンチで身体を伸ばす。やはりバスはつらかった。痛む首をさすりながら本を読む。城崎に行くのは5回目くらいだったが、電車で向かうのは初めてだ。わくわくそわそわしながら待っているとやってきた。普通列車でのんびり旅の始まりである。
電車に乗り込んで、座席を動かす若者たちを見る。西日本で始発に乗るのは初めてでうっかりしていた。進行方向が変わるため、背もたれを逆に移動させないといけないのだ。かなり人が多く、ボックス席の端にせせこましく座る。嵯峨野でどっと人が降りて、ようやく人心地ついた。
太秦で映画村をちらりと長め、保津峡で川を見る。向かいに座っていたおじさんと窓に食いついた。亀岡駅でクマゼミの声を聞き、西に来たことを実感した。
綾部駅で乗り換え。ワンマン列車で福知山まで。私はワンマン列車が好きだ。ドアの開閉が手動だったり、前からしか降りられなかったり、乗客が主体的に動く必要がある。2両しかない車内は満席。さすが夏休み、都会を抜け出したい人たちが多かった。船岡、という駅名でひそかにテンションが上がっていた。平安京を舞台にしたとあるゲームで一番北に位置するスポットが船岡山なのだ。と思っていたが、あの船岡山とは違うようだ。残念。
福知山駅で別のワンマン列車に乗り換える。車体が曇った翡翠の色できれいだった。これに乗って兵庫県に入り、城崎温泉駅に向かうのだ。綾部駅から乗っていた少年たちもいて、竹田城目当てかなと思っていたが、別の場所で降りていった。途中トイレの修理が入ったりしたものの、どんどこ電車は進んでいく。谷間や田んぼを通り抜け、京都駅から約4時間、城崎温泉駅に辿り着いた。
合流する
着いてすぐ、栄さんが到着したとの連絡が入ったので合流しようと駅をうろつく。この人かな、という目星はついていたのだが、姿だけでは判別できない。恐る恐る声をかけ、声を聞いてやっと確信が持てた。フォロワーが、いる! と思った。生身のフォロワーに会うのはいつも緊張してしまう。存在していると理解はしていても、どこかで概念のように思っているからかもしれない。
高坂さんときさいさんも到着し、無事に全員と合流できた。昼食だ! 事前に目をつけていた定食屋に向かう。荷物を1階に預け、身軽になれた。チェックイン時間の前だからか、店内はすいていた。近況報告をしたり、道中の話をしたりしていたら料理が揃う。
私はいか玉丼とざるうどんのセットにした。何を隠そう、私はいかとエビに目がないのである。卵にニコちゃんマークがついているのがかわいらしかった。うどんは意外とコシがあり、讃岐うどんのような歯ごたえで大変好みの固さだった。
食事を終え、まずは荷物をなんとかしよう、ということで宿泊客用のバスに乗り込む。いざお宿へ。
温泉街散策
荷物を預け、チェックイン。高坂さんが説明を受けてくださる。その間、きさいさんに城崎マリンワールドをプッシュした。アジ釣りができる楽しい水族館なのである。用意してきた手紙に貼ったシールもそこで購入したものだった。島根県にあるアクアスの次に、城崎マリンワールドが好きだ。
荷物を預け、散策することに。その日は太陽がカンカンに照っていて、かなり暑かった。風はあっても日差しが強い。各々日除けを装備して住宅の間をてくてく歩く。途中、歩行者用のトンネルがあった。細くて長く、風が通って涼しい。夜に通るとまた印象が変わるのかもしれないが、このときはオアシスのように感じていた。しばらく行くと、温泉街に出た。さすがに外湯巡りはせず。城崎の外湯はかなり熱いのだ。余談だが、私がこれまでに行った温泉の中で一番熱かったのは愛媛県にある道後温泉の外湯である。熱すぎて膝までしか入れなかった。
お土産屋さんを巡ったり、景観に配慮したコンビニで首ほぐしのシートを買ったり、ブックカフェを見つけて店内を眺めたりしていた。ブックカフェのオリジナルキャラクターが栄さんの好みっぽいな、と思っていたら「好きだ……」と呟いていてにっこりした。
「Cafe SORELLA」の表記を見て、喫茶姉妹って意味だろうかとぼんやり思ったりしていた。暑かったなあ……。
お部屋に入る
宿に戻り、ラウンジでまったり。文学の町ということで、作家にまつわる小冊子を読みふける。志賀直哉が療養のために城崎に滞在していたことを今さら知る。文学館にも行きたかったが、今回は原稿がメインなので断念。いつかまた来ようと思う。たぶん、冬に来るのがいいだろう。
「お部屋の準備ができました」と館内アナウンスが鳴り響く。荷物を持って、2泊お世話になるお部屋へ。畳敷きの床にはすでに布団が半分敷かれ、寝ようと思えば寝られる状態になっていた。窓からは川が見下ろせる。
川の手前のグラウンドに妙な既視感を覚えて気づく。昔、この場所にあったホテルに私は泊まったことがある! 確か部屋に掘りごたつがあって、ニンテンドー64を借りることができた。両親がドンキーコングで遊んでいるのを横目に、DSを持ち込んでまったりしていたことを思い出した。その頃にもグラウンドはあって、朝起きたら誰かの名字が大きく書かれていたことが印象に残っていた。そのホテルの名は、ホテルブルー城崎という。
思わぬ巡り合わせに興奮する間もなく、各々が持ち込んだお菓子を味わう。一気に合宿感が強まった。まったりしつつ原稿をする準備をしていると、高坂さんのPC電源アダプタが毛玉取り器のアダプタであることが発覚! とっても悲しい事件だった。アダプタの取り違えは、私も犯しそうな失敗だったから他人事とは思えない。実際、ヘアバンドを忘れたことに家を出てから気づいたのだ。遠出をするたびに何かを忘れてしまうことはよくある。
作業を始める
高坂さんは急遽スマホでの作業に切り替えて、いよいよ作業が始まった。ノートのプロットを確認しながら書き進める人、ルーズリーフにプロットを書き出す人、iPadで作業を進める人、スマホで書き進める人……それぞれが違うやり方で作業に専念している光景は、私の心を駆り立てた。自習している姿にも似ていたような気がする。不思議な景色にわくわくしながら小説の続きに取りかかった。
今回の合宿目標は次の4つだ。
1日目の進捗はエピローグ1347字。合間で首肩ストレッチをしたり、会話したりしていたのでまあこんなものだろう。ちなみに、栄さんがお昼寝をしている間に3人揃ってストレッチをしていたため、起きた栄さんが目を丸くしていた。謎の儀式をしているところを見られた気分になって、笑ってしまった。
長くなったので②に続く。1日目がなかなか終わらない。