7月某日 桃を食べる
今年初めての桃を食べた。二つ入りの桃は、一つ必ず冷凍する。そしてもう一つは冷蔵庫に入れる。
少し熟したものが美味しいと聞いていたので、食べる30分ほど前に常温で置いておく。種をキッチンばさみで取ろうとしたら、果汁がぼたぼたとこぼれてもったいない気持ちになったからもうやらない。
柔らかな桃は口の中で溶けていく。種の周りが酸っぱくて、皮の周りがすこぶる甘い。果実は身と皮の間が一番甘いと祖母に教わった。だから皮は剥かない。子どもの頃の桃は丸かじりするのが当たり前で、切った桃を食べた記憶が薄い。今は二人だから切るけれど。
冷凍した桃は、食べる前に常温で少し溶かす。とはいえ、数日凍らせた桃は固い。かっちかちのそれを包丁でぎこぎこと削いでいく。たまにうすーく切れるときがあって、パフェの上にのっけたらどれほど美しいだろうと思う。だが、今日は桃がメインなのだ。もりもりと削り、こんもり盛って、フォークで食べる。
この桃氷は昔、香川の科学館に来ていた屋台で食べたものの再現だ。そこではかき氷機にかけて薄くスライスしていた。桃を使ったデザートの中で一番のおいしさだった。夏の屋外で食べたから、というのもあるだろうが。
それからというものの、夏になるたびに桃を凍らせて食べている。しゃくしゃくとした食感と、口の中でほろほろとほどけていく甘さ。凍っていた果汁がじゅわりと溶けて桃の風味を余すことなく味わえる。桃味のアイスが好きなら絶対に好きになると思う。
夏の風物詩を味わえて幸せだ。そう思えることがなにより嬉しい。豊かな生活とは、こういう些細なことを楽しむことから始まるのかもしれない。