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「俺たちはここで勝たないと」コント師・プールが追い求める賞レースへの道

3月5日(土)、6日(日)、神保町よしもと漫才劇場にて開催された『Jimbochoグランプリ』にて、総合1位となったプール高橋大志/小海正紀)。
“面白いけど印象に残らない”と言われた過去を払拭すべく、強烈なキャラクターコントで総合1位を獲得。コンビ結成後、初めての1位に喜びを爆発させた2人に、ネタ作りやコンビの関係性、尊敬する先輩についてなど話してもらいました。

うるとらブギーズにもらった言葉が刺さった

――1位おめでとうございます。決まった瞬間、2人ともガッツポーズしてましたね。

小海正紀(以下、小海) 嬉しかったですね。正直、ドッキリを仕掛けられてるんじゃないかって思うくらいウケたので、ちょっとびっくりしましたけど。
高橋大志(以下、高橋) 嬉しすぎて、スーパーサイズ・ミーの岡田さんのギャグ、ブラボーをやっちゃいました(笑)。今まで「面白かったけど、あんまり印象に残らなかった」って言われることが多くて。どうにか打開したいなと思ってた時、うるとらブギーズさんに「そんなの関係なくウケればいいんだよ」って言われたんです。

小海 僕らとうるとらブギーズさんとで、ヨシモト∞ドームで1時間ライブをやった時、後輩から先輩へ質問するコーナーがあったんです。そこで相談してみたら、「その日いちばんウケればいいんだよ。賞レースとかもそうだけど、ウケれば嫌でも印象に残るから」って言ってくださったんです。

高橋 その言葉、すごく刺さりましたね。今もまだ打開できてないかもしれないですけど、1位を獲れたっていうことはその日いちばん印象に残るネタができたんじゃないかなと思ってます。小海 僕らは『Jimbochoグランプリ』当日、空気階段さんの単独ライブの手伝いで地方へ行ってたんですよ。12時に羽田空港へ帰ってきたのでネタを直す時間はあまりなかったんですけど、空気階段の構成作家さんの――僕らの単独にも付いていただいた――平島(太郎)さんと、空気さんに付いてるマルクスさんに相談したら、後半の展開についてアイデアをいただいたんです。で、意見をもらったところを直してやったら、バッチリでした。

高橋 本当にお2人のおかげです。ありがたいですね。小海 若手を見てくれている山田ナビスコさんっていう作家さんも、「見つけたな!」って言ってくれたみたいで。せっかくキャラコントで1位を獲れたので、今後そういうネタを増やしていけたらいいなと思ってます。

――ずっとコントをやってるんですか?

小梅 漫才はほとんどやったことがないですね。どうやっていいかわからないっていうか、正直なところコンビの中でボケとツッコミがはっきりしてないこともあって。

高橋 関係性的にやりづらいところはあるのかもしれないですね。漫才もコントも両方やってたほうがいいとは思いますし、僕はどっちでもいいんですけど。

小海 僕はコントのほうが好きですね。元々、東京03さんとかバナナマンさんとかが好きで。最初、JCA(人力舎の養成所)に入ったんですけど、それも深夜ラジオが好きだったからだったんです。

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曲がったことが嫌いな小海と明るい高橋

――お2人はJCAの同期だったそうですね。その頃は別々のコンビだったんですよね?

小海 そうですね。卒業後、それぞれのコンビでJCAプロモーションっていうところに入って2年くらいやってたんですけど、解散したタイミングが一緒で。

高橋 で、1回、2人でフリーになってから、NSCに入りました。
小海 フリーになってから、いろんな事務所のオーディションを受けてライブに出たりしてたんです。けど、事務所に入るとしても1年くらいかかるかもって聞いたりして。

高橋 在籍できるかどうかわからないまま続けなきゃいけないのは、ちょっと大変でしたね。

小海 どうしようかなって悩んでいて。僕、中野のカラオケでずっとバイトしてるんですけど、一緒に働いてるモグライダーのともしげさんに相談したんです。そうしたら「なんだかんだで吉本」って言われたので、1回入ってみようかなと。……けど、入ってよかったです。劇場があることはやっぱり大きいなと思うので。

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――ネタは2人で作っているんですか?

小海 基本、僕が作ってるんですけど、喋り相手が欲しいので(作っている場所には)いてもらってます。最初の頃、(相方が)今よりちょっとアホだったっていうか。作ってる過程で、このネタのここが面白いっていうのを共有しときたかったのでいてもらってたんです。その名残で、今もいてもらってますね。

高橋 僕もそのほうがいいんで。全部作ってから台本をもらう時もあったんですけど、文字だけ見てもわからないっていうか。

小海 どこがどう面白いのかがね?

高橋 そうそう。過程の段階で理解してないと、覚える作業が増えちゃうのが嫌で。今のやり方のほうが効率いいなと思ってます。

小海 だから2人でネタ合わせするんですけど、お互い、いつも遅刻しちゃって。

高橋 待ち合わせ時間を決めたのに、2人とも2時間遅刻して(到着のタイミングが)バッティングしたこともありました。

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――2時間!?

小海 集合時間は決めても意味ないよね? 例えば15時から始めようとしてたとして、遅れるのを前提として集合時間を14時に決めるんですよ。

高橋 心意気としては14時に着くつもりなんですけどね。

小海 で、結局15時もすぎて、16時に待ち合わせることになっちゃうっていう。サンジェルマンのえいながさんに「それ、本当に意味わかんない」って言われましたね(笑)。

――印象的には全くタイプの違う2人に見えるんですけど、実際はどうですか?

小海 どうなんだろう? 僕のほうが細かいところがあるかもしれないですね。JCAの入学式の会場が人力舎の稽古場であって。入り口近くにある下駄箱に靴を入れて中に入るんですけど、みんな自信がないから、下駄箱付近に溜まっちゃってたんです。そうすると、あとから来た人が入りづらいじゃないですか。あとから来たのに空いてる奥のほうに行かず、下駄箱付近に座ろうとしてる人もいたので、当時19歳くらいだった僕は「邪魔になるし、あとから来たんだから前のほう(奥に)座りなよ」って言ったんです。

高橋 僕、ちょうどその時に入ってきたので、めっちゃ怒ってるヤツいるわって思いました。

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小海 あはは! だって、誰も幸せになってなかったから。

高橋 だから、曲がったことは嫌いかもしれないです。けど、基本、優しい奴ですね。僕は……自分の性格はわからないですけど、人に合わせられるほうで。

小海 性格が明るいので僕にできないこともできるし、平場が得意なのは助かってます。元々、僕らは友達同士でこの世界に入ったわけじゃないので、めちゃくちゃ仲がいいとかではないんです。けど、バランスはいいのかなって。知り合ってから10年くらい一緒にいるので、こういう感じだなとかこういうのが得意だなっていうのもお互い、わかってますしね。


今年こそ『キングオブコント』決勝へ

――では、芸人としての理想像はありますか?

小海 さっきも言ったように、僕らは空気階段さんの単独ライブを第2回からずっとお手伝いしてるですけど、空気さんみたいになれたらすごく楽しいだろうなとは思います。コロナ前のことですけど、ルミネで単独をやった時にスタッフの方がみんな、終わってすぐ打ち上げ会場に行って空気さんの到着を待ってたんです。けど、みなさんが着いて5~10分後に、空気さんも来て。普通、出待ちの方がいたりして時間がかかるものなんですけど、ファンの方も空気さんの迷惑にならないように、パッと(プレゼントを)渡してスッといなくなるみたいで。ルミネを満席にしてめちゃくちゃウケてるのもすごいし、ネタだけでお客さんを満足させてる感じがすごいなって思ったんです。

高橋 本当にかっこいいですよね、あの背中で語る感じ。

小海 今年のツアーでも毎回、ちょっとずつネタを変えたりしていて憧れます。

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――そういう身近な先輩が『キングオブコント』で優勝したのは、大きな刺激になったんじゃないですか。

小海 本当にそうですね。そいつどいつさんも僕らが∞ホールにいた頃、同じコントライブに出ていて。芸人同士でネタを見せて意見を言い合ってから本番を迎えていたんです。

高橋 みなさんがどういう意見を持っているかが知れる、貴重な経験でした。

小海 だから、そいつどいつさんが『キングオブコント』決勝へ行った時も嬉しかったですし、僕らも行きたいっていう気持ちがより強くなりましたね。昨年、初めて準々決勝へ行けて、賞レースのドキドキ感を体験できたのは楽しかったので、今年こそ決勝へ行けたらいいなと。

高橋 僕らみたいなタイプは、賞レースで勝たないとダメですから。じゃないと、世に出られないと思うんですよ。

――『ABCお笑いグランプリ』など、若手の賞レースも出場資格はまだありますよね。

小海 そうですね。だから『キングオブコント』に限らず、賞レースは決勝へ行きたいです。賞レースに出たいはいちばん強いと思います。

高橋 決勝に行かないと、僕らは売れないですから。

小海 そこでちゃんと結果を出すためにも、今後、神保町でまた何かライブをやりたいなって。『Jimbochoグランプリ』もまだ連覇した人はいないので、次も1位を狙っていきたいですね。

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■プール
2016年結成。
高橋大志(左)と小海正紀(右)のコンビ。
2022年3月に行われた「Jimbochoグランプリ」で総合優勝を果たす。

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ライター/高本亜紀 撮影/越川麻希(CUBISM)
企画・編集/山際なぎさ


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