基底状態を知る
いろんなめぐり合わせから、たまたま私を育ててくれていた当時の母親は、様々な生きづらさを抱えていて。
それに対する鬱憤を、家族の中で唯一の無力な子供であり、自分と同じように軽んじられて当然の立場である、オンナの私に吐き出していた。
それはある意味、敗戦による後遺症のようなもので、仕方なかった面もあるのだろうといまは思っているけれど。
でもね。
そのおかげで私は、人間としての“基底状態”を知らずに育ってしまった。
基底状態って、どんな状態かというと。
何もしてなくても穏やかで、機嫌よくいられることだよね。
ただ存在しているだけで、実は私たち、上機嫌でいられるはずで。
なのに、それを知らずに大人になってしまった私は、常に戦闘状態のスイッチを入れ続けて生きてきたわけ。
周りに危険なんてなくっても、いつだってサバイバル体勢。
完全に、“安心”が欠如していた。
でも、遅きに失した感じはあるけど、ようやくいまになってカウンセラーに(なんとも系統だって適切な、練られた手順で)その“基底状態”を教えてもらって。
日常の中に、それを持ち込めるようになって。
これによって、生まれてはじめて、こころの底から信頼できる“安全基地”を持つことができ。
今回、家のWifiを故障させることにより、「お前もう、存在してるだけで上機嫌でいられてるよ」って強制的に教えられて。
なんだろう、いま、なんとも不思議な気持ちがしている。
決して侵されることのない、自分だけの最後の地平って、これだったのね。
自分への信頼ってのも、ここにあったのか。
見ぃ付けた。
だけど、一方で、私が人生におけるとっても大切な部分を“基底状態”を知らないまま生きてきたことも、実はすごぉく意味のあることだったんだって、なぜか思えてきてもいる。
あの体感は、経験しないと分らない。
それを、あらゆる意味でしゃぶり尽くしてきたことは、これからきっと私の欠けがえのない財産になってくれるような気がする。
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