劇団スポーツ
劇団スポーツ主宰・田島実絋によるハワイ旅行記
徒らとは、存在・動作などが無益であるさま、役に立たないさま、むだ。という意味である。 だとしたら僕たちの日常のほとんどの時間は「徒ら」な時間だし、僕自身も「徒ら」な存在であり、これを読んでいるあなたもまたこれから「徒ら」な時間を過ごすことになる。 現代において多くの人が「徒ら」な時間を過ごしていると到達する二つの景色がある。 汚れたカーペットを永遠に洗っている風景と、プレス機で何かを圧縮している風景。これが「徒ら」の二大巨頭である。 もしくは、何の興味もない格闘ゲームの必
今日はハワイ旅行最終日。 心配していた母の熱も下がり、なんとか出かけることができる状態になった。昨日までは39度もあったのに、驚くほどの早さで寛解へと向かった。果たしてそれはハワイの精霊の力か、あるいは神聖なるウミガメの力か。 はたまたずっとハワイの土地を守ってきてくれたであろう偉大なるクジラの力か…。 ホエールウォッチング この船に乗って朝早くに海に出るツアーに僕たちは申し込んだ。沖合まで30分ほど進んでから船長がクジラを探すらしい。 病み上がりの母が長時間船なんて乗って
ハワイで一番好きな時間は間違いなく朝だ。波の音を聴きながら、世界三大コーヒーの一つであるコナコーヒーを飲んだ人々がゆっくりと動き出す。こんなに優雅な朝はきっとハワイにしか存在しない。 僕の普段の朝はと言えば、家を出る20分前というギリギリのアラーム設定で眠れるところまで寝て、結局出発5分前に起床。眼鏡を掴むこともできず手探りで洗面台まで辿り着きながら顔を洗ってコンタクトを入れ、何故かそこら辺に落ちている服を掴んで着替え、鏡を見ることなく家を出る。ボサボサの髪の毛は帽子をかぶ
二日目。 僕は親父と2人隣り合って、バスに乗っていた。 親父と隣り合って乗り物に乗ったのなんて、いつぶりだろうか…。 覚えているのは初めて親父と2人でジェットコースターに乗った時。まだ6歳くらいだったはずだ。安全バーが自分の太ももまで下がらず、僕は振り落とされるのではないかと不安だった。だけど親父がジェットコースターの走行中も僕のことをずっと手で支えてくれたおかげで、僕は無邪気に楽しむことができた。親父の大きくて温かい手が、ずっと自分を守ってくれていた。 親父はあの時から
貯金残高いつでも一桁、水道代を払うのさえ億劫で、カードの支払いの電話は鳴りやまない。会社員として働いた金は、自分の身体に鞭を打ってさらに働くための1日2本のモンスターとタバコ、身体を寝かしつけるためのGABAの錠剤とサプリメントに消えていく30代限界独身サラリーマンです。 そんな僕にある日親父からの一本の電話が。 「退職金が出たから、その金でハワイ旅行に行こうと思う。お前も来るか?」 葛藤があった。 さすがは親父、生まれながらにものが違う、自分と同じ遺伝子を持っているとは