劇団員インタビュー(4)紙本明子×松岡咲子
9月某日 AKIKANにて
インタビュアー:松岡咲子(ドキドキぼーいず)
私は現在、蓮行さんのアシスタントチームに入っており、蓮行さんのスケジュール管理やワークショップのアシスタントなどをしています。このたび、これまでアシスタントを担当されていた先輩である紙本さんに、お話を聞いてきました。[松岡]
入団したきっかけ
松岡:紙本さんの入団したきっかけは、確か、黒木さんとバイト先が一緒で…とかでしたよね?
紙本:そうそう。あと当時の衛星のメイクさんの子も(その同じバイト先に)いて、演劇やるなら衛星に入っといたら?みたいに言われて。
松岡:入団した時の衛星の様子はどんな感じやったんですか?
紙本:私が入った時はたぶん、劇団員が一番多かった時やと思う。
松岡:へー。
紙本:何か、どこまでが劇団員かわからんみたいな感じで。サポートスタッフなのか、他の劇団から手伝いに来ている制作の人なのか、二軍??あ、二軍がある!!みたいな。星衛(ほしまもる)???え?みたいな。
松岡:ははははは。
紙本:で、とにかく、(劇団内に)格差があった感じやった。
松岡:おお。当時から植村さんは…
紙本:いや、植村さんもすごい地味な感じで。
松岡:えええええええええええ!!!!
紙本:いや、なんか、いっつも横でパソコンをカチカチ打ってる人は誰だ?みたいな。
松岡:でも、当時の(蓮行さんの)アシスタントは、植村さんなんですよね??
紙本:アシスタントはねえ…その時いたのかなあ?? まず、蓮行さんがいて、で、当時のプロデューサーの橋本裕介さんがいて、で、メインの役者が7人ぐらいいて。田中遊さんとか岡嶋(秀昭)さんとかチャックさんとか、あ、ファックさんもいたんやけどー。
松岡:ファックさん!
紙本:まあ、ファックさんはその当時新人やったんやけど、まあそんなんわからへんやんか。しかもちょっと(見た目が)ふけてるし。30歳くらいに見えるやんか。
松岡:おほほほ。
紙本:ほんで、他の若い人たちは、周りを囲んで座ってる…みたいな感じだった。当時、京都芸術センターの一室を借りて、稽古したり、会議したりしてたんやけど、部屋の周りを埋めつくすぐらい、30人くらい人がいた。で、その中に喋る人と喋らない人がいて、…ほとんど、蓮行さんと橋本さんだけが喋ってた。とにかく当時は、二軍の人らが上の人らを崇拝してて。
松岡:崇拝!
紙本:でも、俳優さん達はすごいかっこよかったよ。私が入って初めてお手伝いしたのが、『狂騒里見八県伝』(※2001年夏、京都・大阪・兵庫で上演)で。その時初めて衛星の作品を観て、俳優さんらがおもしろくて、舞台上に…熱があったね。芸能人みたいに見えた。みんなにオーラがあって。
松岡:学園ドラマみたいですね。
紙本:ほんまにそんな感じ!ただ、宗教みたいで私も最初ちょっと気持ち悪かったけど(笑)。嫌になったらすぐやめようと思ってたね。
蓮行さんのアシスタント
松岡:紙本さんがアシスタントになったのは、入団して割とすぐなんですか?
紙本:いや…ええ?どやったかな?最初の3ヶ月くらいはほんまに二軍やったから、上のことなんて何にもわかりませんって感じで、とにかく上から落ちてくる仕事をやってた。制作ミーティングで決まった仕事を手伝っていく中で、制作ミーティングに呼ばれるようになって。だから、入団後3〜4ヶ月して初めて蓮行さんと喋ったくらい。『(千年王国の)避難訓練』(※2001年9月の再演)をやってた時やね、アトリエ劇研の楽屋で、初めて喋った。…入団して半年くらいで(蓮行さんの)アシスタントになったんかな?
松岡:蓮行さんから話があったんですか?
紙本:たぶん、橋本さんと蓮行さんにそういう話をされた気がする。その時はたぶん、奥田ワレタさんが(アシスタントの仕事を)やってたはず。何か、私もよくわからんねんけど。
松岡:紙本さんにも知らんことあるんや…。植村さんは?
紙本:植村さんは多分ずっとアシスタント的に動いてて。蓮行さんのスケジュールを管理したり、何かしら(蓮行の仕事に一緒に)連れて行かれるのが、奥田さんやったと思う。
松岡:へー、初めて知りました。
紙本:多分。でも何かそれがうまくいかなかったのか、私がやることになって。
松岡:ほー。
紙本:「君、今日からアシスタントだ!」みたいなことを言われたのかなんかわかんないけど、最初、なか卯に連れて行かれて。
松岡:おほほほ。
紙本:なか卯で蓮行さんにご飯をご馳走になって。(男女が)付き合うとはどういうことかとか、ユダヤがどうとかいう話をされて。
松岡:(笑) 今と全然変わってない!!
紙本:いや本当、なんも変わってないよ!!(笑) 私は最初、北白川のなか卯につれていかれて、「僕は付き合うというシステムについてはね…」とか話をされ。
松岡:全く一緒や!!!!
紙本:多分、松岡さんは、私と全く同じ話を聞かされてるんちゃうかな(笑)。(※ちなみに松岡は和食さとでした。ちょっとだけグレードアップ?)
松岡:最初、嫌やったりしました??
紙本:いやー…覚えてないねんな、何してたか。…最初の頃は、蓮行さんが台本書いてる横にずっと居るみたいな(笑)。お茶運んだりとか、相談のったりとか。
松岡:それも今と変わらないですね(笑)。誰かが居たら書けるっていう点で。
紙本:そうそう(笑)。なんかでも、当時はあまりにもやることが多くて、ほんまに覚えてない。
十数年続けてこれたモチベーション
松岡:ずっと続けてこれた理由って、何だと思いますか?
紙本:何やろ…。同じ一年がないこと、かな。毎年違う一年で、どんどんしんどくなってく。
松岡:あっははは。
紙本:「ええ?!またああ?!」とかじゃなくて、「ええ?!次、それ?!」みたいな(笑)。
松岡:へええええ。
紙本:大概、蓮行さんが無茶を言って、最初はみんな、「また言い出したわ」みたいな感じやのに、気が付いたらほんまにやり始めてる。コックピットを作るとか言い出した時も、すでに藤原(康弘)さん(※コックピットの初号機を作ってくれた舞台美術さん)に舞台美術の話をしてはって。藤原さんも変な人やから、やろうやろうってめっちゃ乗り気で。で、藤原さん蓮行さん私とかで、USJに行って、アトラクション乗って、何がどういう効果があるとか、どのくらいのスペースがいいかとかを視察しつつ遊んだりした。
松岡:ええ…! コックピットが、ユニバが参考になっているとは…。
紙本:それで、スタジオヴァリエ(※京大近くにあったスタジオ)を借りて、藤原さんがそこにもう美術を作ってはって。できたから見に来てくれって言われて、行ったらほんまにできてて、「え、ほんまにやんの!?」って。
松岡:はっはっは!
紙本:いや、ある段階でやるとは決まってたけど、私の中ではそれを見た時に、「わ、ほんまにやんねんや!」って思ってた。…『コックピット』はしんどかったなあ。
松岡:皆さん言いはりますね。『プロトタイプ』の衛星の稽古の時、ファックさんもつくづく言ってはりました。
紙本:新風館の時(※『劇団衛星のコックピット2』、2004年1月上演)は、10時にテナントがオープンするからそれまでに(搬入作業を)やってくれって言われて、朝6時から自転車こいで行ったの、覚えてる。あと、その時、客演で出てくれてた窪木(亨)さんが、客演やったにも関わらず、めちゃくちゃ物を運んでくれて。
松岡:ほう。
紙本:朝めっちゃ早いから、エレベーターが使えなくて。雪の降る中、ほんまにね、1間以上あるパネルを3枚ぐらい背負って、新風館の階段を駆け上がっていく窪木さんを見た時に、がんばろって思ったね。窪木さんや藤原さんみたいに、無駄なことを考えない人がいるんだなと思ったよ。やるとなったらやるんだ!っていう。は!!!ってなった。
松岡:あ、その話、蓮行さんに聞いたことある気がする。
紙本:何かもう、すごいシーンやったからね。だから、皆が覚えてるんやと思うよ。
女性のチカラ
松岡:企業の方とかと一緒にお仕事するようになったのは、それ以降ですか?
紙本:そうやね、金田典子ちゃんが、入団してからかな。その人は企業戦士でもなんでもなくて、女優さんなんやけど、すごいぶっ飛んでて。蓮行さんに感化されて、衛星のやり方に急にハマりはって。突然、お金とってきました!って。すごい綺麗な人で男性から人気で、話しかけられたら仕事にしてくるっていうか。急に蓮行さんに、「この人と名刺交換してきたので、今度打ち合わせに行きましょう!」って言いに来て、「え、何の?!」みたいな(笑)。
松岡:すごいっ!!
紙本:会うって何?!みたいな(笑)
松岡:はっはっは!!
紙本:奈良の劇場さんと知り合いになって、『珠光(の庵)』の公演を買ってくれそうで、企画書渡しといたので、今度観に来てくれるので、挨拶お願いします!!とかって。
松岡:ほほほほ。
紙本:でも、金田さんが出会った人がことごとく仕事につながっていった。ペルペトゥームの吉岡さんもそう。いきなり、「立命館卒業してめっちゃ頑張ってる若いITの人がいて、町屋で会社やっててめっちゃおもしろいので、今度行きましょう!」って。で、蓮行さんと私と金田さんで、ペルペトゥームの前の事務所(※当時は中京の方にありました)に行ったのが、出会い。
松岡:へえええええ。いろんな人との出会いがあったわけですね。初めて聞く話がいっぱいや…。最近は、蓮行さんは、私には、紙本さんの話をするんです。
紙本:ええ?
松岡:私が今アシスタントやからと思いますが、よく植村さんや紙本さんの話はしてくれはるんです。「今まではね、セイラさん(※もう1人のアシスタントの子)とさっつぉん(※蓮行さんは私のことをこう呼ぶ)を足して3倍くらいのことを、紙本さんが1人でやってくれてたんだよ。」って。
紙本:そんなことはないと思うけどな(笑)。
松岡:「この10年はね、紙本の10年だったんだよ。」って。
紙本:ははは。
松岡:「まあ、植村の20年とも言えるがな。」って。
紙本:あっはっはっは。
またまた女性のチカラ
松岡:金田さんが大きなきっかけやったわけですね。
紙本:そうそう。それで、 FTP(フリンジシアタープロジェクト)ができてからは、いろいろ公共的な仕事とかが始まった。もともと最初にFTPの理事をしてくれてた、Ca•Balletのやすなみずほさんという人がいて、その人は戦略的な女性やった。ダンスをもっと仕事にしていきたいって。で、蓮行さんが理事長になってもらおうって声をかけた。その人もすごい綺麗な人で。
松岡:また綺麗な人…。
紙本:金田さんと同じく、ちょっとぶっ飛んでるとこがあって、人と出会ったらすぐ仕事にしてくるみたいな感じで。
松岡:おお。
紙本:やすなさんも、こういう企業とこんなんしたら?とか、衛星さんって学校公演しないの?とかって、いろいろ提案してくれて。その時くらいからやね、私が本格的にアシスタントとして仕事をし出したのは。連絡窓口になったり、小学校に打ち合わせに行ったり、その後、小学校でワークショップすることになったり。外部の人と仕事するようになったのはその頃から。それまでは仕事がなかったからね。その後はどんどんワークショップで忙しくなっていき…。
松岡:そうなんですね。
紙本:そう考えてみると、やっぱ女性やね。女性が波を立ててきたね。
今後
松岡:最後に、今後どうなりたいかとか聞かせてください!
紙本:やっぱり舞台に立つ仕事はもっとやりたいなと思うね。もっとやりたいし、劇団がそうなったらいいな。劇団としても、個人としても、舞台に立つ仕事でもっと稼げたらいいなって思うな。…みんなどうなんかな。
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