「プラットフォーム」うまいもんだなあ
久しぶりに自由創作作品が届きました!
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プラットフォーム 作・うまいもんだなあ
冬は、嫌いだ。
寒いと人との距離が遠い気がする。
いつもよりたくさん服を着ているからだろうか。
家から出たくなくなるからだろうか。
それとも色がないから?
一瞬で桃色に染める桜も、紅の絨毯を作る紅葉もない。
冬といえば白銀の世界。まあ、この電車が走る場所に雪なんて積もらないが。
その電車に乗る人間は冬でも夏でも冷たい。死人のように冷めた顔をしている。
逆に笑っていてもおかしいものだが、子供の頃はこんな楽しくなさそうな大人にはなるまいと何も知らずに思っていたものだ。
目を下に伏せ、指で無機質に液晶を叩く。耳はイヤホンから流れる音楽に自分を沈み込ませては外部をシャットアウトする。
こんなにも色がない世界は嫌いだ。つまらない。ましてやどこにも暖かさを感じない冬なんて大嫌いだ。
ここまで考えたところで終点につく。
無機質な人の流れに身を任せて階段を登り、改札にカードを付ける。
右にスーパー。左に市役所。それぞれに人は流れる。
寒空は相変わらずの灰色。プラットフォームの植木鉢は何も育ってない。はず。
そう、一年中土しか入っていない植木鉢に今日は紫とクリーム色の冬牡丹が咲いていた。
なるほど、今日初めて見た色かもしれない。
紫。
決して明るい色ではないが、嫌いな冬に少し色が加わった。
終点の駅のプラットフォームの一番乗り場の植木鉢。
人との距離を感じる冬と電車が嫌いだったが、好きになったわけではないが、丸い可愛いらしい冬牡丹を横目に流すのはちょっと楽しみだ。
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あとがき
駅に謎の植木鉢ありません?一年中土しかないみたいなやつ。たまーに見ると冬だけ花が咲いてたりします。なぜか。