紫陽花「みち」作・綾咲希

こんにちは。大阪芸短文芸部です。
6月のテーマ「紫陽花(あじさい)」の作品が届きました!

綾咲希の作品です。
どうぞお楽しみください!

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 ⑩赤バラ、睡蓮、金木犀
 伝わる人には伝わるだろう。私の好きな花である。私の好きな花はご覧の通り、紫陽花はない。嫌いな訳ではない、むしろ好きに寄っている、とは思う。しかし好きな花は何ですか?と聞かれて、真っ先に出てくるタイプの花ではない。
 小学校5年生の時に、鎌倉見学という行事があった。上級生たちは、グループで各々行きたいところを選び、様々なコースで鎌倉を見学していたのだが、私たちの学年は、東日本大震災の影響か、鶴岡八幡宮を目指すコースか、鎌倉大仏を目指すコースのどちらかにクラスごとに分けられ、先生方が決めたコースで鎌倉を回ることになった。
 上級生たちは、長谷寺の紫陽花を目当てに長谷寺に行くグループも多く、上級生エリアの廊下には、様々な紫陽花の写真が飾ってあるのを毎年のように見ていたから、自分たちもきっと行くのだろう、そして写真を撮るのだろう、とそう思っていた。
 しかし、先生方が決めたコースには長谷寺は入っておらず、私たちの学年は盛りを迎えたはずの紫陽花を見ることなく、鎌倉を後にした。
 私の紫陽花の記憶といえば、こんなところだろう。紫陽花を目当てに出かける、と言っても時期的に雨のことが多く、出不精な私にとって、雨の中、わざわざそう好きでもない花を愛でに行く、という行為は到底信じがたく、当然したこともない。
 だが先日、所用があり、普段はあまり行かない自宅近くの遊歩道に行く機会があった。遊歩道は、近くに住むボランティアが草木の手入れをしているようで、季節ごとに様々な花が咲き誇っている。春は満開の桜が私を出迎えてくれたが、先日は紫陽花。そう、紫陽花が私を出迎えてくれた。
 物憂げに、しかし、堂々と咲き誇った紫陽花は、私に梅雨の楽しさを教えてくれたように思う。
 梅雨が明け、夏になれば、紫陽花は枯れ、また別の花が咲く。花は何を思い、咲くのだろう。
 私は何を思い、この世に芽吹いたのだろうか。

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後書
 色んなことが重なってて、病んだ結果がこれです。紫陽花って、土がアルカリ性か酸性かで、青と紫に色が変わるって話を聞きました。じゃあ、白い紫陽花は中性の土なのかな……などと無知を晒して終わろうと思います。
 来月もよろしくお願いします。

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まだまだ、紫陽花の作品は届く……はずです!
お楽しみに!

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