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11/23 秋の茅刈り@千町原
11月23日の勤労感謝の日に、毎年実施している秋の茅刈りが開催されました。今年度は、小雨が降り、厳しい寒さの中での作業となりましたが、参加者55人という、例年より多い参加者数で、そのうち約半数は初参加です。高校生から地元の熟練者まで、多種多様な参加者と共に茅金市場への出荷に向け、千町原のススキを刈り取りました。
はじめに、集合場所の山麓庵でスタッフから当日のスケジュールや安全上の注意について説明がありました。その後、「なぜススキを刈るのか」に加え、活動する意味を生物の視点と千町原の整備の履歴について、当会の佐久間専門員と原専門員から説明がありました。草原には、カヤネズミをはじめとした、草原でしか生息・生育できない生物が沢山います。しかし、湿潤で温暖な日本の気候では、草原はやがて森林になってしまいます。草原は古くから人の暮らしの中で利用され、その形を保ってきましたが、生活の変化と共にその利用も減っていき、明治時代には国土の20%を占めていた草原も、現在は1%ほどまで減ってしまっています。草原が減少しているということは、そこに棲む生き物も減少しており、そういった生物の多様性を維持するためにも草原を残す必要がある、という内容の説明でした。
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現地に着き、1班8人程度に分かれて茅刈りの準備に入ります。準備体操をした後、芸北茅プロジェクトを担当しているスタッフから「茅束」の作り方について実演を交え説明がありました。茅束を作るにはススキを刈る必要がありますが、そもそも「茅」とは何でしょうか。実は「茅」という植物は存在しません。屋根材として使う草の総称を「茅」と呼んでいます。なので、ススキも「茅」のひとつということですね。地域によっては、ヨシやイネ、ササなども「茅」として使ったりもします。つまり、ススキの束も屋根に使われて初めて「茅」と呼べるものになるということです。当然、屋根になるには茅葺職人の手で葺かれる必要があります。職人さんに使ってもらうには屋根として使いやすい茅束を作る必要があります。その、使いやすい茅束にするためのポイントがいくつかあり、根本が真っ直ぐなこと、背丈が180cm以上であることや解きやすいように結び目を同じ向きに揃えることなど、製品としての規格について、詳しい説明がありました。「茅」について学んだ後はいよいよ実践です。班ごとに持ち場を決めて、茅束を作っていきます。黙々と刈る人、ワイワイおしゃべりしながら刈る人、束ねる人などそれぞれ自分のペースで茅刈りをしていました。しばらくすると、「カヤネズミの巣を見つけた」という声があがり、ススキの葉っぱで出来た、綺麗な丸い巣が出てきました。千町原にカヤネズミが生息しているという証拠です。ススキに覆われた茅場からススキがどんどん運び出されていきます。
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お昼は、山麓庵でかりお茶屋のおむすびと豚汁、お漬物をいただき、冷えた身体を内から温めてもらいました。「豚汁もおむすびもお漬物も美味しい!」と、続々とおかわりをされる方が出て大好評でした。
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千町原に戻り、午後からの作業は茅束作りに加え、茅塔(ぼうとう)を作ります。今回は、雨で茅が濡れているため、根本側を広げながら、6束1セットで立てていきました。水が伝って、下へ流れるよう角度と、風が通りやすいように茅同士が重ならないように慎重に立てていきます。こうして出来た茅束は108束で、12月7日の茅金市場に集荷されました。今回は、44枚のせどやま券となり、千町原の保全活動の運営資金に充てられます。茅は、県内や町内の茅葺建築に使われる予定です。
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帰りには芸北オークガーデンの入浴が当日限り有効ということで、冷えた身体を芸北せどやま事業の薪が使われている薪ボイラーで沸かす温泉で、温めていただきました。茅刈りに参加してくださったボランティアのみなさま、お昼ご飯を提供していただいたかりお茶屋のメンバー、ご協力いただいたオークガーデンの従業員の方々、本当にありがとうございました。次回もぜひ、よろしくお願いします!
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