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バロルスキーという鬼才

 ポール・バロルスキー(1941~)という有名なアメリカの美術史家がいます。いまでこそ西洋美術史研究の先端は他の人文学と同様にアメリカが牽引していますが、その走りのひとりです。専門はイタリアルネサンスですが、アプロ―チがそれまでと全く違います。

 どのような作品でもいいのですが、それまでのドイツ・オーストリア系美術史学と、第二次大戦後に彼らが亡命した英語圏での研究は、大まかに言えば「絵の図像の出典探し」でした。「この絵の女神の表現はオウィディウスの○○の一節を基にしているに違いない」「あの人物はローマ神話のあれこれを合わせている」といった、実質的に文献学のようでした。
 20世紀半ばまでの美術史学の雰囲気を知りたいならパノフスキーという美術史家(西洋哲学でいうカント級の存在感がある美術史家)の本を少しでも読めば分かります。

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