
Photo by
buzete_a
英国のプロパガンダ・アート
戦争画といえば、プロパガンダとの関連で私たちはまず、日本やドイツのそれを思い出すでしょう。しかし英国はそれに先駆けて、第一次世界大戦時より国家的な戦争美術プロジェクトを行なっていたことはなぜか知られていません。日本の戦意高揚を目的とした戦争画の制度的なプロトタイプは英国なのです。したがって、かつてのプロジェクトの理解は戦争画を理解する上で欠かせないと思います。
第一次世界大戦の勃発後、英国政府にとって焦眉の課題となったのがプロパガンダです。それは外交と内政上の理由から必須となります。外的には中立国アメリカを参戦させてイギリスに加勢させ、内的には世論を味方につけ国民の士気を高めることが勝利を導くうえで最重要事項となりました。
そのため主に対外的プロパガンダを行う機関として 1914 年に密かに設立されたのがウェリントン・ハウス(Wellington House)と呼ばれた機関であり、それの指揮のもと戦争美術家が雇用され、戦争を描いた画集が発行されたり、展示会が企画されたりするようになります。
ここから先は
1,915字
/
1画像
この記事のみ
¥
300
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?