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近代文化の聖地オンフルール 🇫🇷

飛行機移動が普及する前、パリの人が休暇に行くリゾートといえば南仏ではなく、北のノルマンディー地方だったと聞いて驚いたことがあります。確かに今でもTGVでパリからニースまで4時間以上かかりますし、海が見たいなら北に行った方が近いのはわかりますが、あの曇り空でどんよりとしたエリアで休暇などとりたくないというのが私の本音です。

パリジャンでダンディ、近代都市の感性といえば詩人ボードレールの名を挙げる人は教養主義がとっくに滅んだ今でもそれなりにいると信じていたいですが、この『巴里の憂鬱』の作者は思いの外ノルマンディー地方を好み、中でも小さな港町のオンフルールという街を愛したことは意外に思いました。

モロー《風景:オンフルール、ボードレールの母オーピック夫人邸の庭》水彩画

父が死んで母親が軍人のオーピックと再婚。そのオーピックがオンフルールに別荘を持っていました。そしてオーピック没後にボードレールが母と共に居座るようになったというのが始まりとはいえ、詩人はこの街を実に気に入り、『巴里の憂鬱』の「港」や版画論などをこの街で書いていたりと、ボードレールのお気に入りの街というだけに留まらず、芸術的な霊感源としても機能しました。

というわけで興味を持ち、行ったみた次第です。倉敷みたいなものだろうなと予感しながら2時間半ほどバスで揺られます。

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