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ふたりのミケランジェロ

面白い論文を読んだのでざっとした備忘録。ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョとミケランジェロ・ブオナローティ、要するにバロックの大画家カラヴァッジョとルネサンスの巨匠ミケランジェロの関係について。↓ドレスデン大のユルゲン・ミュラー氏の2021年の論文です。


対象はベルリンにあるカラヴァッジョ作の《愛の勝利》(勝利者としてのアモル)1601〜02年の作品です。楽器や鎧といったものが散乱する空間に、愛を司るアモル(キューピッド)がこちらを微笑んでおり、愛が全てを征服するという寓意画として語られてきました。

論文の内容は簡潔にまとめると
①当時は宗教改革に対抗するための規律強化で、美術における裸や官能的な表現は禁止という方向に向かっていた。ミケランジェロの絵も当て布が描かれたり、鎧を着た厳粛な天使などが描かれる。
②カラヴァッジョはその表現規制に真っ向から反対した。そのため規制されたがなお官能的な「偉大なるミケランジェロ」の彫刻や彼の《最後の審判》の図像をこの絵に拝借して、いわば権威の盾として用い、その意を示そうとした。

という話です。

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