古希を迎えたジジィな僕は「60歳以上の昭和ポップス」を聴いていた。昭和のヒット曲をランダムに集めた〈YouTube動画〉だ。
山口百恵・河島英五・欧陽菲菲などの懐かしい曲に続いて流れてきたのが、寺尾 聰のヒット曲〈ルビーの指輪〉だった。
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🎵くもり硝子の向こうは風の街
さめた紅茶が残ったテーブルで
襟を合わせて日暮れの人波に
紛れる貴女を見てた
そして二年の月日が流れ去り
街でベージュのコートを見かけると
指にルビーのリングを探すのさ
貴女を失ってから🎶
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すると台所から家内の声が飛んできた。
「父さん、この曲も売れたよねぇ~」
「そうだよなぁ~・・・でもこの曲・・男が女に未練タラタラの歌だぞ」
「・・ん~~そう言われればそうだよね」
「そうだよ。女と別れて2年も経ったのに、街で別れた女に似た女を見掛けた時に、贈った〈ルビーの指輪〉をまだ指に嵌めてないかなぁ、なんて探す訳だろ❓️」
「うん」
「未練タラタラじゃん❗️・・まぁ、大体が男とはそんな生き物なんだよ。純真というか・・例外もあるだろうけど・・そこらへんいくと、女は一旦別れたら後は無いみたいだけどさ」
「まぁねぇ」
「昔の女のことをいつまでも忘れられないなんて・・女に女って書いて女々しいって言うけどさ、女々しいのは男の方かもしれんぞ」
「そう言う父さんはどうなのよ・・」
「昔の彼女のことかぁ❓️僕はそんなことはないよ。例外の男じゃ。今はS子ひとりに決まっとるじゃないか」
「ふふふ・・ホントかしら❓️」
〈ふふふが怖い・・〉
「はい、次の曲いってみよぉ~っ❗️」
藪蛇だ。矛先がこっちに向いてきたじゃないか・・
けれども、「ふふふ」はS子の妻としての自信があるからこその、チョッとした意地悪なギャグなのかもしれないなぁ・・なんて身勝手なことを思う僕なのであった。
そう言えばS子との婚約時代、貧乏な僕は〈ルビーの指輪〉どころか、指輪のひとつだって買ったやったことはないし、結婚してから数年たった頃に、ショッピングセンターのフロアの片隅でテナント業者が売っていた¥1.000―の指輪をベアで買ったら、もの凄く喜んでくれたS子だったなぁ・・
・・・そんなことを想い出した。