無事に女の子を出産してお腹がスッキリした娘は、退院したら、妊娠中には御法度だった、生物の〈寿司〉を思いっ切り食べたいと言う。出産前からそう言っていた。
家内が言う。
「父さん、じゃぁ、退院したら、娘が行きたいって言ってたチョッと高級な回転寿司に連れて行ってやろうね」
「いやいや、退院したら、帰りにその店に寄って買って帰るっていってたぞぉ、新生児を抱えて寿司屋には行けないしなぁ・・・」
「そうだよね」
「家に帰っても赤ちゃんを放ったらかしにして寿司屋には行けないしさ」
「そりゃそうだわ」
「だから、退院して1秒でも早く寿司を食べるには、帰りがけに寿司を買うっていうのがベストだってことなんだな」
「そうだね」
寿司への、恐るべき娘の執念であった。