【ドライブの顛末】
家内と2人で遠方までドライブに出掛けた。
・・・・・・・
その帰り道、トイレ休憩のためにセブンイレブンに立ち寄った。トイレから出てハンカチを取り出そうとポーチの中をまさぐった時である。スマホがないことに気が付いたのだ。
〈❗️・・・〉
スマホは必ずポーチの前面にあるポケットに入れて持ち歩いているのに、ポケットが空っぽなのだ。見ればポケットのファスナーが開いたままになっている。
クルマの中に落としたのかなと思って直ぐにクルマに戻って探したのだが無い。
クルマとトイレの動線上を探しても落ちていない。トイレの中にもない。ことの深刻さに顔から血の気が引いていくのを覚える・・・
家内も心配して問い詰める。
「ねぇ、トイレに入る前はあったの❓️❗️」
「わからん❗️」
家内も店内と外回りを探してくれたが見当たらないのだ。
「おい、さっき寄った道の駅で落としたんだろうか❓️」
「そういや、店の中のベンチに座って、父さんスマホいじってたの覚えてるよアタシ❗️」
「よし❗️道の駅に引き返してみよう❗️」
見つからなかったらショップに行って即スマホのサービスを停止してもらわなければならない。
「アタシは2・3回無くしたことあるけど、父さんらしからぬことをしたわねぇ、それも県外だし」
そう家内に突っ込まれながらクルマをひたすら走らせた。
・・・・・・・
道の駅に辿り着くと、直ぐにトイレや駐車場や土産物売り場などをくまなく探してみたのだが、スマホはどこにもない。
「アタシ、店の人に訊いてみるわ。落とし物で届けてあるかもしれないし・・」
家内はそう言うと店内に入っていった。そして暫くして出てきた家内が浮かぬ顔をして言う。
「届いてないって・・念のためにアタシのスマホの電話番号を伝えておいたわ。見つかったら連絡を入れてくれるって❗️」
「そうかぁ・・・S 子ぉ~チョッと僕のスマホに電話掛けてみてくれよ。誰かが拾ってくれてたら出てくれるかもしれんしぃ」
「うん、掛けてみるぅ・・」
ところが、何度か掛けたのだが、呼び出し音はしても誰かが出てくれることはなかったのだ。
「父さん、出ないよ」
「そうかぁ・・・悪い奴に拾われていたらヤバイよなぁ、悪用されるかもなぁ」
2人はガッカリしながらもう一度辺りを探してみるのだがスマホは何処にもないのだ。
すると、家内が何かを思い出したように言った。
「父さん、ここを出る時、店の中のベンチに座ってスマホをいじってたわよねぇ」
「うん、それは覚えてるよ」
「それから外の自販機でコーヒーを買ったよね」
「うん、買った買った」
「それからクルマに返る前に、父さん〈足湯コーナー〉の横の、水が湧いてるところの石碑の写真を撮ってたじゃない❗️」
「おぉ❗️撮った撮った❗️」
「そこまではスマホを持ってたのよ」
「それから直ぐにクルマに乗ったんだから、乗るまでに落としたんじゃないの❓️ポケットのファスナー閉めてなかったんでしょ❓️」
「あぁ・・」
「そうだとしたら、悪い人間じゃなければ店に預けるとかするんじゃないの❓️」
「預けてないということは・・ヤバイな」
「・・ダメかもね・・それから店の人が言ってたけど、この辺は地の人が多いんで交番に届けた可能性もあるからって・・地の人はいい人が多いんだって・・その店員さんもね、以前落としたことがあるんだけど交番に届いてたんだって❗️交番の住所も教えて貰ったのよ。すごく感じのいい店員さんだったわ」
「そうかぁ・・じゃあ、その交番に行って紛失届けを出しておこうか・・」
そして交番に向かった。
・・・・・・・
ところが、残念ながら交番にはスマホは届いていなかった。落胆しながら紛失届けの手続きだけをして交番を後にするしかなかった。
「S子ぉ・・さっきauショップの前を通ったよなぁ」
「うん・・そこに寄ってスマホのサービスを止めてもらったほうがいいんじゃない❓️」
「そうだよなぁ・・でももう一回僕のスマホに電話を掛けてみてくれないかぁ❓️それで出なかったらauショップに寄ってサービスを止めてもらおうよ」
「うん、わかった・・」
助手席の家内は自分のスマホから僕のスマホに電話を掛けた。
「・・・・・あっ❗️もしもし❗️あっあのぉ、主人がスマホ落としまして・・アタシ主人の妻なんですけど・・あっ、ありがとうございました❗️ありがとうございました❗️」
「えっ❗️あったんか❗️❓️」
「あっはいっ❗️セブンイレブン●●店ですね。先程行ったお店です。直ぐに伺いますので、よろしくお願いいたします❗️では一旦失礼致します」
「さっきのセブンか❗️」
「そうよ❗️お客さんが駐車場に落ちてたのをレジまで持ってきて下さったんだって❗️」
じきにセブンイレブンに到着するや、2人は店の中に飛び込んでいった。
「あのぉ、先程の電話のものですが❗️」
家内が開口一番にそう言うと、ひとりの女性店員さんがレジの奥にあったスマホを手に持って差し出してくれたのである。
「こちらでございますか❓️」
それは紛れもなく僕のスマホであった。瞬間、力の抜けるような安堵感が全身を包み込む。
「あっはいっ❗️それ僕のです❗️ありがとうございます❗️」
「ありがとうございました❗️」
夫婦で何度もお礼を言うばかりであった。
どうやら、初めにここに寄ってトイレのに入る前に駐車場に落としたようなのだ。そしてトイレでスマホが無いことに気がついて駐車場やらクルマの中やらを探したつもりが、見落としていたということになる。
そして我々が道の駅に逆戻りしている頃に、どなたかが駐車場に落ちているスマホを発見して店に届けて下さったんだということが判明したのであった。
もう殆んど諦めて掛けていた矢先での発見に、大いに驚き感激をしたのである。
さすがに日本である。財布だってスマホだって本人の元に返ってくるという、素晴らしい国なのであった。拾って下さった方には感謝しても感謝しても感謝しきれない。
警察と道の駅にスマホが見つかった旨を連絡して、胸を撫で下ろながら帰路についた夫婦なのであった。
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