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【ベト7】

ベートーヴェンの「交響曲第7番」のことを〈ベトしち〉と呼ぶらしいことを知ったのは、つい数年前のことである。

と言うのも、9つあるベートーヴェンの交響曲の中でも、昔から聴き続けてきたのが「3番:英雄」「5番:運命」「6番:田園」「9番:合唱」の標題付きの交響曲と、それら程ではないにしても、まぁ聴いていたのが「1番」という訳で、「2番」「4番」「7番」「8番」に触れることがなかったからである。だから「7番」に通称があることも知らなかったのだ。

さて、その「第7番:ベト7」に触れたのがいつ頃なのかと言えば、二ノ宮知子原作の人気漫画〈のだめカンタービレ〉がテレビドラマ化されたものを観た時だったのだ。

〈のだめカンタービレ〉は、野田 恵(上野樹里)と千秋 真一(玉木宏)が主演する、クラシック音楽界を舞台にしたラブコメである。後に映画化もされている。

ドラマでは様々なクラシックの名曲が登場するのだが、特にテーマ音楽的に扱われた曲が〈ベト7〉なのだ。

ところで、クラシック音楽との出会いというものは男女の出会いにも似ていて、出会ってから理解が深まってきて好きになる場合が殆んどだと思う。知らない曲というのは、それが喩え名曲であっても、1度や2度聴いただけではなかなか理解が出来ないことが多いのだ。

まぁ、クラシック音楽でも男女間でも一目惚れする場合も勿論あるのだが、〈ベト7〉の場合は何度も聴いているうちに、段々と好きになっていったパターンの交響曲であった。

時に、最近ではドライブ中に「チャイコフスキーの交響曲第4番」を聴くことが多いのだが、一緒に乗っている息子がこう言ったのだ。

「父さん、クラシック音楽ってドラマみたいじゃね」

〈クラシック音楽〉には門外漢の息子が、知らない交響曲を何度も耳に聴かされているうちに段々と馴染んできたようだ。これには驚いた。

そう、クラシック音楽はドラマなのだ。クラシック音楽が、山あり谷あり、喜びあり悲しみありのドラマのように聴こえるということは、理屈抜きでその音楽を理解し楽しんでいる証拠なのだ。クラシック音楽を聴くのに小難しい理屈など要らない。

決してクラシック音楽が趣味ではない息子の、クラシック音楽への開眼に、なんだか嬉しくなってしまった僕なのである。


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