【まち針】

〈まち針〉は、漢字を使うと〈待ち針〉と書くらしい。

良し悪しは別として、僕が小学校の時には、男子児童にも「家庭科」の授業が組まれていて、裁縫や料理を習ったものである。男子も教材としてソーイングセットを買わされていたのだから、如何にも戦後教育だと言わざるを得ない。

さて、その「裁縫」の授業では、慣れない手付きで布を縫うのだが、本縫いする前に仮止めとして〈待ち針〉を使うことを教えて貰うのだった。なる程、それで〈待ち針〉というんだなと、子供心に直ぐに納得した訳である。

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ところが、〈YouTube〉であるチャンネルを観ていた時のことである。

その回は「性に関する研究者」がゲスト出演していて、過去のセックスに関する逸話を語っていたのだ。

黒縁の眼鏡を掛けた中年女性のその研究者は、上品な顔からは想像も出来ないような下ネタ話を、さらりとした口調で喋り捲るのである。

やがて、世界３大美女の性癖の話になり、〈クレオパトラ〉は兵隊の士気を上げる為に多くの兵士を口で奉仕したとか、〈楊貴妃ようきひ〉の陰毛は長くて膝まであったんだとか、そんな話に続いて、愈々いよいよ〈小野小町おののこまち〉の話に入っていくのである。

絶世の美女〈小野小町〉には、当然多くの男どもが言い寄る訳なのだが、〈小野小町〉は大変に身持ちの堅い女性であったらしくて、言い寄る男を悉く拒絶していたのだという。

〈小野小町〉の余りの仕打ちに、男たちの間に、妙な噂が立ち始めるのであった。

「あんだけ拒絶するなんておかしいじゃないか・・ひよっとして、小町には〈穴〉が無いんじなないか❓️」

真偽の程は定かではないが、そんな逸話が残っているのだという。

そして、糸を通す〈穴〉の無い針を〈小町針〉・・〈まち針〉と呼ぶようになったのだという。

だから、〈待ち針〉は後世の当て字なのかもしれない。