【明細書】
クルマ好きの友人がいた。
特に外国のクラシックカーが好きで、予てから、イギリス製のとあるクルマが欲しくて仕方がなかった。
だから長年探し続けていたのだが、やっとお眼鏡に叶った1台が見つかったのだった。売ってやるというオーナーが現れたのだ。
ところが、彼が想定していた価格を上回る価格を提示してきたのである。しかも、先方のオーナーは現金での取引を希望している。
コツコツと貯めた金額ではとても届かない。でも、どうしてもそのクルマが欲しい。
考えた末にたどり着いた結論が借金をする、ということだった。
銀行のカードローンからの借り入れと、サラ金にまで手を出して、彼は3桁のお金を工面したのである。
そうして彼は憧れのクルマのオーナーになり、夢のような生活が始まったのであった。
・・・・・・・
ところがある日のことである。彼は浮かない顔をして僕に話し掛けてきたのだ。
「やられたよ・・・」
「えぇ? なにが?」
聞けばこうだ。
ある朝起きると、テーブルの上に皺を伸ばした明細書が置いてある。見れば、それは昨夜仕事から帰ってきた時に、丸めてゴミ箱に捨てたはずの〈サラ金の明細書〉だったという。
「カミさんが、もう、1週間も口を利いてくれないんだよ・・・」
と、彼は情けなさそうに呟いた。
憧れの愛車との薔薇色の生活が、皺クチャの紙切れひとつで吹っ飛んでしまったのだった。
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