【僕のおばあちゃん】 13 プチフルート 2023年6月5日 05:54 明治生まれのおばあちゃんは、小柄で目がクリッとした、非常に社交的な人だった。連れ添いのおじいちゃんは大工さんをしていた。おじいちゃんは物凄く丁寧な仕事をする大工で、宮大工レベルの大工だった。ところが、丁寧で綺麗な仕事をするのはいいとしても、如何せん仕事が遅かった。謂わば芸術家気質なのだ。おじいちゃんは腕は一流でも、要領よく人を使って金儲けをすることが苦手だったのだ。そんな亭主を見た負けず嫌いのおばあちゃんが、さも悔しそうに言っていた。「ワシにキ●●マが付いとったらのぉ~・・人を使うてジャンジャン儲けちゃるんじゃがのぉ~」と、大いに悔しがったのである。明治の女は自分のことを〈ワシ〉と呼んでいた。そして、おじいちゃんは〈小唄〉にも精通していて、花街の芸者さん達に持て囃されたりもしていたので、おばあちゃんの機嫌は悪く、2人はよく喧嘩をしていた。そんな訳で、〈ヤリ手女〉のおばあちゃんは、亭主の仕事ぶりや置屋通いには大いに不満を持っていたのだが、僕が高校生時分におじいちゃんが死んだ時、「おじいさ~ん❗️おじいさ~ん❗️」と、おじいちゃんの胸に顔を埋めて泣いていたのを思い出すのである。喧嘩はしてても、やっぱり夫婦だったんだなぁと感心したものである。 ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #エッセイ #毎日note #イラスト #短編 #おばあちゃん #夫婦喧嘩 #女 #明治 #面白い話 #女傑 13