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【MR2の女】

まだ日本の景気が良かった頃だ。バブルに浮かれてひとりの女の子がMR2を買った。

ところがある日のことMR2が動かなくなってしまったのだった。いくらセルを廻してもエンジンが掛からない。やがてバッテリーも上がってしまった。PHSが繋がったので彼女はJAFを呼ぶことにした。

「もしもし!エンジンが掛からないんです!すぐに来て下さい!え~と場所はですね・・・」

《はい!分かりました!今から1時間くらい掛かりますがよろしいですか?》

「はい!待ってます。よろしくお願いします!」

・・・・・・・

ようやくやって来たJAFのサービス員に彼女は言った。

「あっ!JAFさん!大変なんです!エンジンが無いんですっ!どうりで掛からないはずです。エンジンどっかで落としたんでしょうか?」

ボンネットを開けて狼狽えている彼女にサービス員が言った。

「あの~これMR2じゃないですか。前のボンネット開けてもエンジンはありませんよ」

そう言いながら彼は後ろを開けた。

「わっ!あった!」

「MR2は後ろ側にエンジンが積んであるんです・・まぁ正確に言えば、ほぼ中央というか・・ミドシップですから」

「えぇ~っ!そうだったんですか・・・すいません・・でもエンジンが・・」

彼女が恐縮してそう言うとサービス員が呆れたように言い放った。

「ガス欠です!」

「ガスケツって・・すぐに直るんですか!」

サービス員は呆れるのを通り越してこう言った。

「・・あのねぇ、ガソリンタンクが空っぽになったということです」

もっと言ってやりたいことがあっただろうに、サービス員はグッ!と堪えたに違いない。





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