【貸本屋と少年】
昔は貸本屋があった。子供達はタマに〈ぼくら〉や〈少年画報〉などの人気漫画本を借りに行った。1泊で5円~10円というのが相場だったと記憶している。
当時の貸本屋は、八百屋と同じように、表紙を上に向けた本がテーブルに並べられていたので、どういう本なのかが一目で分かった。
その貸本屋は子供向けの本ばかり扱っているだけではなくて、大人が読む本も置いていた。子供心に大人本のコーナーには近寄らないように自重はしていたのだが、内心物凄く興味があったことは否めない。
でも、チョッとでも興味を示すような素振りでも見せると店番のおばあちゃんが直ぐに感付いてこう言った。
「 そっちはエロ本じゃ❗️子供が見るもんじゃないで❗️」
寝ていると思ったのに、おばあちゃんのエロコーナー感知センサーは完璧に作動しているのであった。
実を言うと、僕は本や漫画を読むことがそんに好きな少年ではなかった。なのに、なぜ貸本屋に出入りしていたのかと言うと、月刊漫画雑誌の「附録」が目当てだったのだ。
月刊の「冒険王」とか「ぼくら」とか「少年画報」には〈精巧なペーパークラフト模型〉が附録として付いているのだが、月刊誌を買うお金など持っていないから買えなかったのである。
特に「少年画報」の附録は秀逸で、少年達には絶大な人気を誇っていたのだ。
貸本屋は、本を貸すのが商売だったので「附録」は商品にならないことから、「附録」のみを10円くらいで売っていたのだ。これは有り難かった。
だから本の発売日になると、他な人に買われる前に、真っ先に「附録」を買いに行っていたのである。
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