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【墓参り】

次男の定期健診の為に病院に来た。

ドライブがてらに我々夫婦も一緒に来ているのだが、帰りに僕の兄が眠る墓苑に皆んなで墓参りをしようかということになった。暫く御無沙汰していたのだ。

その病院は自宅から車で2時間は掛かる距離にあるのだが、いい病院なのでそこに決めたという経緯がある。

兄の墓はその病院から車で30分そこいらの所にあるのに、山道をグニャグニャと上がって行かなければならないので、ついつい疎遠になっていた。

「S子ぉ~、なんか御供え物を買って行こうよ」

「そりゃそうよ。手ぶらでなんか行ける訳ないでしょ」

「病院の中に〈ローソン〉があるから、そこで兄貴が好きだった〈ビール〉と〈酒〉と〈おつまみ〉でも買ってくかぁ❗️」

「なんか他に食べる物も買おうよ」

「そうだな」

早速〈ローソン〉に行ってみた。

「父さん、先ずは〈ビール〉と〈お酒〉を買おうかぁ」

「そうするか・・・兄貴は酒好きだったからなぁ」

ところが店内をグルグル回っても〈ビール〉や〈ワンカップ酒〉が見当たらないのだ。

「S子ぉ~〈ビール〉も〈酒〉も無いぞ」

「そうねぇ・・無いねぇ・・」

「・・・・やっぱり無いない❗️」

「あっ❗️ある訳ないじゃん❗️ここ、病院だよ」

「おぉ❗️そうかぁ~ある訳ないよなあ」

病院内で〈酒〉を売ってる筈がないのであった。

結局、墓参りに行く途中のコンビニで買い物をしてから墓苑に向かったのである。

兄の埋葬は、義姉のたっての希望で「樹木葬」にした。だから墓石は無くて、見晴らしのいい山の上の桜の木の元に兄は眠っている。

「樹木葬」の一角には、兄1人の遺骨の他にも色々な人の遺骨も埋められていて、銅板プレートに其々の名前が刻んであるのだが、予約という形で、まだ死んでもいない義姉の名前が、兄の隣に並んで刻んである。

そんな訳なので、いずれ義姉も桜の木の元へ入ることから、家を継いだ我々夫婦が本家の墓石の下に入る予定になっている。

それはウン十年も先の話ではないだろう。 


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