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【ハエ取り紙】

家内が物置を整理していたら、懐かしい〈ハエ取り紙〉が出てきた。相当に古い物のようである。

おそらく、10年前に亡くなった母が、大量に買い置きしていたのだと思う。使い切れずに残っていたのだ。

パッケージには〈カモ井のハエ取り紙〉と書いてある。〈カモ井〉というメーカーのものだ。

今でこそ〈蝿〉が少なくなったが、僕が子供の頃には無茶苦茶多くて、野良犬のウ〇コに集ったり、汲み取り式の便壺の中で遊び回ったりした〈銀蝿〉が、食卓のご飯の上にとまったりして閉口していたものだ。

だから当時は〈ハエ取り紙〉が必需品で、台所や食卓の天井には、いつでも数本の〈ハエ取り紙〉がぶら下げられていたものである。

〈ハエ取り紙〉を引っ張ると、本体からベトベトの粘着液が塗られた半透明の茶色いテープが螺旋状に出てきて、それが1mくらいまで伸びた。

〈蝿〉が多い夏には、テープが〈蝿〉で真っ黒になるくらい捕獲れたものである。

〈ハエ取り紙〉の原理は〈ゴキブリホイホイ〉みたいなもので、ビロ~ンと伸ばした粘着テープの片方を天井の釘かなんかに引っ掛けてぶら下げて使用する。そして、下側にある本体の紙筒には蝋紙で出来た逆さスカートが着いていて、それを上に向けて拡げておくのだ。そうすると、粘着テープから根性で逃れたヤツが下に落ちてきても、スカートにキャッチされて下まで落ちないという構造になっているのだ。

それでも運がいいのか悪いのか、スカートにキャッチされなかった〈蝿〉が、最悪の場合、食卓のご飯の上に落ちてくることがあった。

ご飯の上でネバネバの〈蝿〉が動いているのを見ると、もう一挙に食欲が失せるのである。


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