パピコと大人を感じた瞬間
その日は特別暑いことはなく、特別寒いことはない、秋の夜長。
出張ついでに数カ月ぶりに実家に帰り、母さんが朝仕事に行く前に作った夕飯を一人ダイニングテーブルで食べていた。
前のソファーには親父がくつろぎながらスマホをぴこぴこ触っている。
夕飯を食べ満腹になり甘味が欲しかったぼくは、
(親父がいるから常備アイスあるだろうな)
そう思いから冷凍庫からパピコを取り出して、
ぱきっ
2つに分けて1つ目にかぶりついた。
もさもさちゅーちゅーと吸い出しているぼくはこの家を出る前の若造そのものだった。何も変わってないな。
パピコのかた一方を吸い終えた後、
ぶるっ
と震えた肌と一緒に、パピコの甘さと満腹感から妙な満足感がぼくを襲った。
(もうぼくも若造じゃないのかもな・・・)
(・・・残り半分、親父にあげよ)
いつもだったらパピコ独り占めなのにな。
そう思って片手に持っていたパピコをそっと冷凍庫にしまった。
「お父さん、冷凍庫にパピコ半分入ってるからー」
そう言ってぼくは風呂場に向かった。
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