HSK6級合格までにやったこと
全世界で実施されている中国語のレベルテスト”HSK”。最近では中国でビザを取得する際にも必要になることがあり、受験する人が増えています。1年ほど留学して中国語漬けになれば、漢字を理解できる日本人なら最高級の6級合格は難しいことではありませんが、社会人になって留学する時間を作るのはなかなか難しいもの。ほとんどの人は日本で勉強しながらレベルを上げていくことになると思います。私自身もそうでした。そこで私がHSK6級合格までにやったことをご紹介してみたいと思います。
※「入門から初級」「中級」「上級」に分けて書いています。それぞれの最後には「ポイントまとめ」をつけているのでそこだけ見てもいいと思います。「最後に」は読んでもらえると嬉しいです。
●入門から初級
入門から基礎固めの部分は最もパワーが必要で、挫折しやすい部分なので、日本で学校に行くのもオススメです。私も学生時代に学校で基礎を学びました。
【発音練習に関するオススメ】
私は勉強開始と同時に中国人と日本人の先生から発音指導を受けました。これはとてもよかったと思っています。ネイティブの先生から正しい発音を聞くことが大事なのは言うまでもありませんが、日本人の先生は「日本人が中国語をうまく発音するコツ」を知っているからです。これから中国語を始める方はぜひ日本人による発音指導も受けてみてください。私の場合、四声については日本人の先生の方が指導が厳しく、できるまで何度も発音練習をやらされました。声調は後から矯正するのが本当に大変なので、とにかく心を強く持って初級のうちに身につけることを強くお勧めします。
【ピンインの習得】
ピンインは単語ごとに地道に覚えました。頻繁にやったのは「听写」と言われるディクテーション。音を聴いてその文章を書き取っていくのですが、意味がわからない単語はピンインで書き取り、後で意味を調べます。その繰り返しで音とピンインが正確に紐づくようになりました。
【単語】
中国で作られているテキストは大体基本単語が網羅されています。私はHSKでいうと4級に少し欠ける1000語くらいの基本単語をテキストを読み進めながら覚えました。
【文法】
入門から初中級レベルだと、フレーズの暗記と単語の入れ替えで簡単な会話や文章はできてしまいます。また、日本人は漢字を理解できるので、初中級レベルの読解はさほど文法に詳しくなくてもほとんど問題なく解けます。そのため、私は当初ほとんど文法の勉強をしませんでした。
【ポイントまとめ】
・入門時は中国人と日本人の先生に発音を教えてもらうことがオススメ
・四声は初級のうちに徹底的に身につける
・ピンインは「听写」を繰り返して習得
・文法がよくわかっていなくてもフレーズの暗記で初中級まではなんとかなる
●中級
社会人になってから中国語を使う機会がないまま十年以上が経ってしまいましたが、深圳の発展に驚き「絶対に上級までやる」という強い決意で勉強を再開しました。当初は中級レベルくらいあるかと思いましたが、十年以上離れている間に多くの単語や表現をすっかり忘れていました。また、ネット用語などの新語、使い方が変わっている単語なども多数あって、発音以外はほとんど一から勉強し直しという感じでした。
【生の中国語に触れる】
最初にやったことは、「生の中国語」に触れること。今はSNSなどを通してたくさんの日中交流会が開催されています。そういうものに積極的に参加し、日本語を学ぶ中国人と実際に話してみました。が、本当に驚くほど聴けない、話せない状態。日中交流会に出てくるような中国人は日本語がうまい人が多いので、「○○って中国語でなんていうの?」と質問攻めにして一つ一つ表現を覚えていきました。
また、同時にやったのが言語交換。毎週時間を決めて日本語と中国語を教え合います。ここでもシーンごとの言い回しなどをたくさん教えてもらいました。
【HSK5級受験】
本格的に勉強を再開してから数ヶ月でHSK5級を受験。当初は4級を考えていましたが、目標は高い方がいいと思い、5級にチャレンジしました。受験1ヶ月前の段階で語彙数はまだ1000ちょっとだったので、過去問を解きながら1ヶ月くらい集中的に不足単語を補いました。また、中国語に耳慣れするために、中国人のお友達と頻繁に会って中国語だけで会話をしてもらいました。その結果、205点で合格(300点満点で180点以上が合格)しましたが、その時の私の語彙数は規定の2500には遠く及ばず、依然として1500くらいだったと思います。2500あれば満点が取れるという計算だと思うので、語彙数が規定数に達していなくても上の級を狙ってみるのも一つの方法だと思います。
【週1回、学校に行く】
交流会で知り合った人と縁があり、中国の会社の日本支社で仕事をする機会に恵まれました。通訳をしてくれる人はいましたが、極力中国語で話すようにがんばりました。でも、日が経つにつれて話せていないことが明らかになるばかり。何とかその状況を打破したくて、週1回、学校に通うことにしました。中国語の文章を読んで、その内容についてフリートークをするというクラスです。ところが、クラスメートは私以外全員中国に在住経験があり、レベルを上げるというよりは在住時のレベルを維持する目的の方ばかりでした。結果として私は学校でも思うように声を上げることができませんでした。
でも、このクラスを通じて学んだことがあります。トークテーマが中国テック界の発展だった時のことです。その時の私は自分でもびっくりするくらいよく話しました。そして「興味があることには饒舌になる」というのは母語でも外国語でも同じなんだということを身をもって体験しました。今思えば、なかなか発言できない私のために、先生がそのテーマを選んでくれたのだと思います。おかげで、その気づきはその後の勉強において大きな指針となりました。
【ポイントまとめ】
・日本にいる中国人とSNSなどを活用して積極的に交流
・日本語を学びたい人と定期的に言語交換
・検定試験を目標&モチベーションに語彙を増やす
・興味ある分野の文章や映像を教材にすると効率的
●上級
【台湾で短期間学校に行く】
日本で学校に行ってもなかなか思うように話せるようにならないので、ついに私は「中国語だけの環境に一定期間身を置く」という手段に出ることにしました。リモートで仕事をしながら、というのが条件だったので、いろいろ検討した結果、ネットの安定を優先して台湾の語学学校に通うことにしました。期間は4週間。授業は平日に2時間だけでしたが、その間はずっと中国語。会話力を上げたいという私の希望に合わせてテキストの朗読と1対1のフリートークを中心にしてもらいましたが、他にHSK6級の作文対策もしてもらいました。この時から私はようやく中国語の「文法」を意識して学ぶようになりました。中国語は英語の時制のような細かなルールがありません。助詞がないので語順が大事ではありますが、単語の羅列で意思疎通ができてしまうことも少なくありません。でも、ないようである「文法」を学ばないと中国語らしい中国語を書くことができないのです。HSKの作文指導を通してそのことを痛感できたのは大きな成果でした。それ以外にも日本にいるお友達に台湾のお友達を紹介してもらい、一緒に遊んだり、近郊の観光地に出かけたり、望み通り中国語だけの環境を満喫しました。
【HSK6級受験】
台湾から戻ってすぐ、HSK6級の試験を受けました。台湾滞在の成果としてリスニングと作文は明らかにレベルが上がり、自分でも手応えを感じることができました。結果、ギリギリ192点とはいえなんとか合格(300点満点で180点以上が合格)。一方で、5級ではポイントゲッターであった「読解」の点数が伸びず、文法、そして外国人泣かせの成語(四字熟語)に大きな課題があると感じる結果でもありました。
こうして学習期間3年半ほどでHSK6級ホルダーになりましたが、ギリギリ合格ではまだまだ自ら胸を張って「中国語は上級レベル」とはいえません。雑談で使われるスラングもわからないし、ニュースなども興味のない分野はほとんど聞き取れません。本当の勝負は、実はここからなのでした。
【ポイントまとめ】
・中国語だけの環境に一定期間身を置く
※私は4週間滞在しましたが、1週間くらいでも学校に通えば十分レベルの底上げが見込めます。
・文法と成語を意識的に学ぶ
・HSK6級にギリギリ合格しても真の上級者とは言えない
●最後に
私の経験の中で、1)学生時代に基礎を学んでいた、2)リモートで仕事ができたので一定期間中国語だけの環境に身を置くことができた、この二つは大きなアドバンテージだったと思います。でも私のようにリモートでの仕事が難しい方でも1〜2週間くらいは時間を作れるはずです。実際、私が通った台湾の学校にはそういう方が何人か在籍していました。まずは1年ほど集中して基礎を作り、日々中国語に触れるよう努力し、臆せずアウトプットを続け、短期集中でグッと負荷をかけて底上げを狙う、という方法は日本にいるサラリーマンの方でも十分可能だと思います。
それから、オンラインレッスンやアプリについてですが、私自身はほとんど使いませんでした。使ってみてもどうしても続かなかったのです。単語が定着するのは圧倒的に生身の人間とのコミュニケーションから学んだものだったので、交流会や学校を積極的に選びました。もちろんアプリが合っている方もいると思いますので、いろいろ試してみてください。
HSK6級は最上級なのでもう上はありませんが、ギリギリ合格と250点では中国語のレベルがまるで違います。私も240点超えを目標に勉強を続けていましたが、これまでと同じやり方ではもうほとんど進歩を感じることができなくなってしまいました。そしてついに深圳移住へ、となるのですが、そのお話はまた次の機会に。
最後までお読みいただきありがとうございました。私の経験がみなさんの中国語学習の一助になれば幸いです。