S-233 聖フォルトゥナトゥス遺物箱
石膏像サイズ: H.31×W.17×D.14cm(原作サイズ)
制作年代 : 15世紀(現存は19世紀製作のレプリカ)
収蔵美術館 : サント・フォルトゥナード教会
この美しい女性の首をかたどった彫刻は、中世初期のラテン詩人である聖フォルトゥナトゥスの遺物箱として15世紀に製作されたもので、フランス中央部リムーザン地方の町サント・フォルトゥナード(Sainte-Fotrunade)の教会に収蔵されています。
894年にアキテーヌ地方のアジャンAgenという町から聖フォルトゥナトゥスの聖遺物がもたらされ、その保存のために15世紀に聖遺物箱が製作されました。ただし15世紀製作のオリジナル彫像はすでに消失しており、現存しているのは19世紀になって製作されたレプリカのみです。
ヴェナンティウス・フォルトゥナトゥス(Venantius Honorius Clementianus Fortunatus 530-610)は、北イタリアのトレビゾに生まれ、ラベンナで教育を受けました。565年フランス中部トゥールにある聖マルティヌスの墓へ眼病治癒感謝の旅に出た後、そのままガリアにとどまり、フランク王家の宮廷に迎えられます。フランク王クロタール一世の后ラデグンディスの恩寵を受けたことから、後にポワティエの司教となりました。彼はこの地でたくさんの詩、神学論文などを残し、中世最初のラテン詩人と目される存在となりました。代表作としては、叙事詩体の「聖マルティヌス伝」、「聖ラデグンディス伝」などがあります。献詩・聖歌の分野でもたくさんの作品があり、それらは現代でも歌い継がれています。
オランダ・Dordrechts Museum 「ラデグンディスに詩を朗読するフォルトゥナトゥス」 Lawrence Alma-Tadema作 1862年 (写真はWikimedia commonsより)