L-606 花を捧げる少女レリーフ
石膏像サイズ: H.56×W.68×D.10cm(原作サイズ)
制作年代 : 紀元前460年頃
収蔵美術館 : ルーブル美術館
出土地・年 : ギリシャ・ヴェルギナ 1863年
このレリーフは、紀元前470~60年頃にテッサリア(アテネよりも北部)のファルサラで制作されたもので、1863年にフランスが行ったマケドニアの調査の際に発掘され、ルーブル美術館の収蔵品となりました。墓碑彫刻の一部であったと推定され、母と娘の姿であるとする説もあります(右側の女性がより年長である)。中央で交わされる各々の右手には花が、左側の人物の左手には種子の入った小袋があり、それを交換しようとしていると解釈されています。製作年代がアルカイック期からクラッシック期への移行の時代であるため、髪や衣類の表現にはアルカイック的要素が残っています。しかし、二人の人物が花をやり取りするというテーマ・図像は、直立不動のポーズを基調とするアルカイック期の表現からは大きく遠ざかっており、来たるべきパルテノン神殿の世界を予感させる作品です。
このレリーフを発掘した考古学者のレオン・ウーゼー(Léon Heuzey 1831-1922)と、建築家のオノレ・ドーメ (Honoré Daumet 1826-1911)は、ナポレオン3世の命を受けてギリシャ北部エリアの発掘調査を行いました。ウーゼーは、当時のアテネに開設されていたアテネ・フランス学院(l’École française d’Athènes, EfA 古代ギリシャ発掘・保全のために、フランスがアテネに設置した機関)に在籍していた人物です。当初の目的は、東方におけるカエサルの戦闘の痕跡を調査することだったのですが、それと共に多数の遺跡を発掘し、特に古代マケドニア王国の首都アイガイ(ヴェルギナ)の発掘に着手した功績は大きなものでした(後に、アレキサンダー大王の父親のフィリッポス2世の王墓が含まれる可能性が指摘された)。たくさんの発掘物がルーブルへと送られ、ドーメの描いた遺跡のデッサン、スケッチは高く評価されました。その発掘調査の際に出土したのが、今回取り上げているレリーフです。ウーゼーは、その後も古代ギリシャ神託の地であったデルフィの場所の特定に貢献したり、古代ギリシャ・エジプト・ローマの装束についての研究を推進しました。
ルーブル美術館収蔵 「花を捧げる少女レリーフ(Exaltation de la Fleur Excavated by Heuzey & Daumet 1863)」 紀元前460年頃製作 石膏像の原形
(写真はWikimedia commonsより)