パリ・オペラ座の日々1993~1994:7月14日 「パリ祭」ではなく「革命記念日」 バスティーユ・オペラ座「カルメン」
7月14日
とうとう7月14日になりました。シャンゼリゼでは朝からデフィレ(Défilé militaire:軍事パレード)が行われ、戦車の行列やら歩兵やらが歩く映像がテレビに映し出されている。テレビが戦闘機の映像を映した次の瞬間に、自分の真上に爆音がして戦闘機が旋回して行った。
Mさんから☎あり、バスティーユのオペラ座で無料券に並んでいるとのこと。慌てて出かけて行き列に加わる。小雨の中を2時間くらい並んで、ようやくカルメンのチケットをゲット。でも570Fの席だったので大喜び。チョン・ミュン・フンの指揮でオケがビシッとした演奏だった。昨日のファウストとずいぶん違う印象。開演前には「ラ・マルセイエーズ」が演奏され、公演後のカーテンコールは会場総立ちというお祭りムードの一日だった。またもコオロギ君たちが来てた。
カルネ 39F
オペラ座売店 40F
日本ではシャンソン的な世界観とともに「パリ祭」なんて呼ばれていますけど、フランスではあれは単なる「革命記念日」。絶対王政の世界を市民が打倒したという、国家のアイデンティティを再確認する祝日です。花火が打ち上ったり、音楽・踊りのイベントもあったりしますが、政治的な側面が中心の一日だと感じました。
シャンゼリゼでは朝から大規模な軍事パレードが行われ、大統領も参加。たくさんの軍人、軍事車両が行軍し、空からも爆音で戦闘機、爆撃機、輸送機、ヘリがデモンストレーションを行います。面白かったのが、アパートのあるヴァンセンヌの森付近は、シャンゼリゼから東方向への直線状にあるため、テレビ放送に戦闘機が映し出されたな…と思った次の瞬間に爆音が鳴り響いて窓のすぐそばを通過していったのです。あんなに近くを戦闘機が飛ぶのは初めての経験で度肝を抜かれました。
軍事的な要素は面白がるようなことではありませんが、ヨーロッパの国々というのは、平和が当たり前のことではないということを骨身にしみて理解しているのだなと、つくづく感じた瞬間でした。夜にはミッテラン大統領によるテレビ演説が行われ、内容は全然理解できなかったんですけど、最後を「Vive la France! Vive la republic(フランス万歳、共和国万歳)」と力強く締めくくっていたのが印象的でした。
そして7月14日はオペラ・バスティーユでの公演が無料の日です。事前に情報は知っていたのですが、行列で長々待つほどオペラに情熱は無かったのでスルーのつもりでした。でも友人のMさんが列に並んでるからおいでよ、と電話をくれたので喜んで出かけて行きました。
matinee gratuite(無料)と表記があります。
途中から列に加わったので2時間くらいで入場できて、15時からのマチネの「カルメン」を観ました。普段だと570F(だいたい1万2000円くらい)の席なのでこれはラッキーでした。オペラ音痴の僕たちでも、カルメンは知ってる部分が多くてすごく楽しめました。筋立ても分かりやすいですしね。
この日の指揮は、当時のバスティーユ・オペラ座音楽監督でもあったチョン・ミュン・フンさん。世界的に評価の高い方ですね。この日のオーケストラも素晴らしい演奏でした。